今日の映画 – ラッキー(Lucky)

Lucky

映画レビュー

昨年91歳で亡くなったハリー・ディーン・スタントンの遺作。1950年代からコンスタントに活動していて出演作は100本を越えるという。そのほとんどが脇役、というか主演らしいのは「パリ、テキサス」だけやないかと思う。最初に観たのは1970年代の西部劇、その後西部劇が作られなくなって日本公開作で見ることが少なくなったが「エイリアン」の宇宙船乗組員や「グリーンマイル」の囚人役など、あれっというところに出ていた。

主役はほとんどなかったが出演作の監督には、デビッド・リンチ、ヴィム・ヴェンダース、ジョン・ミリアス、スチュアート・ローゼンバーグ、 ディック・リチャーズ、フランシス・フォード・コッポラ、リドリー・スコットなどそうそうたる名前が並ぶ。その一人、デビッド・リンチはこの映画に友人役で出演までしている。

映画は90歳を迎えたラッキー(ハリー・ディーン・スタントン)名も知れない田舎町の一軒家での数日間の生活を淡々と写すだけ。冒頭、朝目覚めてから冷蔵庫の牛乳を飲み、変な体操をするところなど、決まった行動を毎日繰り返していることをセリフ無しで観ている側に分からせる演出が上手い。90歳の体は肉が落ちて皮膚がたるんで老人そのものであるが、シャツを着て、ブーツとジーンズを履くと決まるところはさすが。

毎日通うダイナーでの日課のクロスワードで出てくる「Reality」という単語がラッキーの思想・心情を理解する鍵となる単語。実在する「モノ」だけが信じられるもので、それ以外の宗教や精神的なものを重視しない。それでいて、90歳の割には健康ながら、忍び寄る死を恐れている。ラスト近くの酒場での地元の友人達とのシーンでは「死ねば全てがなくなる」と演説し、「そうなったら、どうする?」と聞かれて「微笑むだけさ」と答えて微笑むところが最高。

本人が亡くなっていることもあるが、観ていても与えられた脚本を演技しているのではなく、ラッキーとハリー・ディーン・スタントンが同化しているというか、自分自身を演じているような感じ。この映画が亡くなる前に間に合って良かったと思う。

映画の中でジョン・ウェインの名前が出てくるが、それとは別に廃屋となった建物の看板に「Stagecoach Saloon and Grill」の文字が見える。ジョン・フォード監督ジョン・ウェイン主演の映画「駅馬車(原題 Stagecoach)」へのオマージュか? そういえば、映画の中で使われている音楽も西部劇風のがいくつかあったし、100本以上に出演していても、最後は初期の西部劇物へ回帰しているのかもしれない。ハリー・ディーン・スタントンは自身のバンドを持っていたくらいなので、映画の中ではハーモニカを演奏し、スペイン語で一曲歌っている。

予告編

2018年に観た映画

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