今日の映画 – ある天文学者の恋文（La Corrispondenza）

この映画の予告編は映画館で何度か観ていて、ストーリーもなんとなく想像できたので、正直そんなに期待していなかったが観てみると予想していたより良かった。

親子ほど歳の離れた女学生と恋愛関係にある天文学者でもある教授が自分の死期を知って、死んだ後もメール、携帯メッセージ、手紙などが計ったタイミングで相手に届くように綿密に計画して実行に移すという、死後のストーカーみたいな話。恒星の光は地球に届くまでに何光年も掛かっているので、現在地球から見えていても、その星はすでに無くなっているかもしれないということから、主人公を天文学者にしてあるのだろう。

そういうところまでは予告編から推測できたが、教授役のジェレミー・アイアンズが適度に枯れていて抵抗なく観ることができるところが良かった。これがコテコテのおっさんやったらそれこそストーカーや。ジェレミー・アイアンズはアカデミー主演男優賞も獲っているし、シリアス物で実績も積んでいるが、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」でのブルース・ウェインの執事役みたいな軽い役にも出惜しみしないところが良い。

相手役のオルガ・キュリレンコは約10年のキャリアで目立った作品は「007 慰めの報酬」と「オブリビオン」くらいであまり記憶に残っていなかったが、この映画では良かったので今後に期待。

監督のジュゼッペ・トルナトーレは「ニュー・シネマ・パラダイス」の成功以来、作品数は少ないがマイペースで自分の好きな映画を撮っているような監督。この映画の舞台は現代で、電子メールやメッセンジャーを駆使するところは今風ではあるが、イタリアやイギリスにロケしてヨーロッパの伝統と文化を感じさせる映像を撮っている。ストーリーでも、主役の教授があっさり死んでしまって、その後の一方通行のメッセージだけでは単調になる恐れがあるところに、残された女学生と母親との葛藤をうまく組み入れてメリハリを保っているところなどよく考えられている。

そして、教授の水没したメモリーカードから読み出されたノイズだらけの動画をPCで再生して教授を追想するシーンは「ニュー・シネマ・パラダイス」のラストで検閲でカットされたキスシーンをつなぎ合わせた傷だらけのフィルムを映写しながらアルフレードを追想するシーンへのオマージュか。観てみるとなかなか奥が深い。

Trailer

2016年に観た映画