都内の公園めぐり、今日は小石川植物園。 ここは江戸時代の薬草園「小石川御薬園」が起源で、後に「小石川養生所」が併設され、明治になって東京大学の付属施設となったもの。
説明書きによると、「小石川御薬園」をさらに遡ると麻布にあった薬草園が小石川へ移転したもので、その麻布の薬草園は自宅の近く、今年花見に行った「光林寺」のあたりにあったという。偶然でも、こういう繋がりが発見できると面白い。
場所は都営三田線の白山駅からあるいて10分くらいのところ。植物園の塀沿いの「御殿坂」というダラダラ坂を下ったところに入り口がある。
門を入ったところの事務所で入場券を買う。驚いたのが、事務所から5m進んで左を見たこの風景。どこか田舎の山の中を歩いている風で、とても東京23区内とは思えない。
植物園の中は、手入れの行き届いた人工的な部分と、自然のままに放置されたかのような部分とが入り交じっている。 最初は比較的手入れされているところからスタート。 まずは、精子発見のソテツ。植物学の慣例かどうかしらんけど、このソテツ以外にも園内には歴史的発見が行われた木やその子孫が記念として植えられているのがいくつかあった。
整備された道路と両側に生い茂る木々。来客が少なくひっそりとしている。
季節としてはツツジがちょうど見頃。種類がたくさんあって、これは「日の出霧島」という種類。
これは本館の建物。
名前の分からん白い花。
手前がツツジ、その奥がシャクナゲ、さらに奥が木蓮。
「シダ園」は日よけの覆いがあって、見たことがないシダが植えられていた。
そしてこれが「柴田記念館」。今日は開いている日だったので入ってみる。
建物の造りは昔の研究室という感じ。展示物は民俗学の博物館みたい。
そして、サクラソウが展示されていた。小石川植物園は沢山の種類のサクラソウを育てているが、公開されているのは一部だけという。 どうやら、これがその公開展示らしい。
柴田記念館を出て少し行ったところにあったのが「メンデルのブドウ」。説明書きによると、昔の園長がチェコのメンデルが研究していた修道院を訪ねた際に、メンデルが研究に使っていたブドウの種を所望して、翌年送られてきたものを育てたものとのこと。
同じ所にあったのが「ニュートンのリンゴ」。これもイギリスからもらったニュートン由来のリンゴの木。
ちょうど花が咲いていた。うまく実れば、やがては万有引力を再確認することになるのかも。
すぐ近くにあった藤の木。花はピークをやや過ぎたとこと。
園内に藤の木はいくつもあったけど、藤棚を作ってもらっているのは皆無で、低い支えがある程度で地面を這うように育っている。この藤はたまたま寄りかかるフェンスがあったので立ち上がっている。
これは温室。残念ながら、今日は入れない日だったので、外から見るだけ。
楓の木にはピンクに色づいた種が付いている。
ここの並木は全部楓。 こんな幹の太い楓を見るのは初めて。
ユキヤナギは満開。
こっちは精子発見のイチョウ。 よっぽど記念樹が好きらしい。
このスズカケノキの大木は明治9年に植えられた日本で最も古いもの。植物園の起源は江戸時代に遡るので、園内にはもっと古い木があるかも知れないけど、外来の樹木でも100年たてば十分立派になることが分かる。
このユリノキも同様に、日本で最も古い株らしい。
木漏れ日を受けるタンポポの綿毛。
この木は約300年前のナツメの一種。台風で何度か被害を受けたが、元気に若芽を出している。
木の生い茂ったところでは、森の中を歩いているよう。日中でも日陰で涼しく、木漏れ日で道はまだら模様。 このあたりは園内でも小高いエリアで自然のままに放置されているような所、森の香りがする。
低地にある日本庭園の方へ下っていく途中のつつじ山は満開。
色々な種類の花が咲き乱れる。
日本庭園の池。このあたりまで来ると、木も刈り込まれて手入れが行き届いている。
「ツュンベリーのマツ」。スウェーデンの植物学者の来日200年記念行事で植樹された黒松。
再び、高台の方へ戻ると関東大震災の記念碑があった。当時はここが避難場所になっていた。
中腹にあったイチョウの大木。上に広がる枝の張り方が存在感アリ。
もう一度、日本庭園の方へ下っていく。菖蒲園は花にはまだ早かった。
池と背景の木々。ここは植えられている植物が多様で、木々の枝ぶり葉の色がそれぞれ違って面白い。
植物園の西の端にある「旧東京医学校本館」、1876年築の木造2階建て、重要文化財。ここに移築される前は東大の赤門脇にあったらしい。屋根の上に尖塔があり、正面入口上にバルコニーがある洋風建築やけど、屋根は瓦葺き。
「旧東京医学校本館」の前は芝生で開けた土地になっているので周囲をパノラマ撮影してみる。
水辺に沿って東へ移動。日本庭園から離れると池の周りも人手が入らない自然のまま、一面緑。
もう一度、北側の高台へ上がる。旧養生所の井戸が残っている。関東大震災の際には、避難者の飲水として役に立ったらしい。
クスノキの大木。幹だけで絵になる。
この木が「ハンカチの木」。なんでハンカチかというと地面に落ちている白いものに注目。
白く見えるのは、普通の葉ではなくて花を包む包葉というもの。たしかに、枝に付いている時から白くてハンカチのように見える。
つつじ園の隣、写真では左側の木の下にあるのが「甘藷試作跡」の記念碑。青木昆陽が1735年にサツマイモの栽培を試みた業績をたたえる記念碑。形はともかく、色はサツマイモに似ているのは偶然か?
休憩所には小さな売店と自動販売機がある。「東京大学植物園のど飴」が目を引くが買わなかった。
その隣にあったのが薬草保存園。説明書きによると、1684年に麻布にあった薬草園を小石川へ移したのが「小石川御薬園」の始まり。明治になって東大付属となった後、1979年から「薬草保存園」として100種類以上を集めて栽培しているとのこと。
所々にこのような標識があるけど、森の中では地図を持っていても居場所がわからなくなることがしばしばあった。
園内の見所はほぼ網羅したので正門へと戻る。途中にあった高い木はメタセコイア。
ここに来るまでは、24区内で森林浴ができるのは目黒の「自然教育園」だけと思っていたけど、「小石川植物園」も「自然教育園」に劣らず森林の散歩を楽しめる。
自然のままの姿という点では「自然教育園」に一歩譲るものの、起伏に富んだ地形や、人為的に造られたことによる植物の多様性では「小石川植物園」が優っていると思う。
小石川植物園(東京都文京区白山3−7−1)