映画レビュー
第2次世界大戦終結後にもはや超大国として植民地経営を継続することができなくなったイギリスが、インドの植民地を解体して主権をインドの国民へ譲渡する時期が舞台。
円滑に独立を進めて撤退するために最後のインド総督として赴任してきたのがマウントバッテンとその家族の物語が指導者視点。他方、総督の邸宅に務めるヒンズー教徒のジートとイスラム教徒のアーリアとの物語が一般国民視点、という形で並行して語られる。
一般的な知識として、イギリスから独立するにあたって、ヒンズー教徒の国インドとイスラム教徒の国パキスタンに分離独立したことは知っていたが、その舞台裏がどうだったのかは知らなかったので非常に興味深かった。
マウントバッテンは当初統一したインドとしての独立を目指して、ガンディー、ネルー(初代インド首相)、ジンナー(初代パキスタン総督)などの有力者と会談したが意見はまとまらない。そうこうしているうちに、地方での宗教対立が暴動や虐殺へとエスカレートするのを止めることができなくなって分離・独立へと考えを変える。映画でのこのあたりの描写は予備知識がなくても分かりやすい。また、歴史上の有名な人たちを演じる俳優も無名だが本人と似た人が充てられている。
指導者たちが国を分ける線引をしているうちに、ジートとアーリアの恋愛は進むが異教徒対立の環境でアーリアが父親と住む家が暴徒に襲われたりして前途多難。ジートと別れて後にパキスタンとなるカラチへの移住を決意したアーリアが乗った列車が襲われる。さらに、独立に合わせて発表されたインドとパキスタンとの国境線は、パンジャーブ州とベンガル州を分断していてその結果国民の大移動が発生。さらに暴動と虐殺で100万人が亡くなったというからスケールが違う。
出演俳優はマウントバッテン卿役がダウントン・アビーでのお父さん役をやったヒュー・ボネビル。マウントバッテン本人とは似ていないが、イギリス軍人で紳士という役柄にはうってつけ。マウントバッテン婦人役のジリアン・アンダーソンはX-ファイルシリーズでスカリーを演っていた人。映画ではかなり積極的に夫にアドバイスするしっかりしたおばちゃん役。
この手の映画では歴史的事実を曲げることはできないので脚色の範囲も制限を受ける。映画の中ではマウントバッテン裁定と呼ばれたインドとパキスタンとの分離独立は、実はチャーチルの時代にイギリスがパキスタンの石油とロシアに対する戦略的な地点を確保するためにジンナーと密約を結んでいたということになっているがこれが事実なのか脚色なのかはよくわからない。
ちょうどインドへ初めての旅行に行こうとしていた時期だったので、その歴史の一部を知ることができたのはタイミングとしてよかった。
予告編
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