今日の映画 – 500ページの夢の束(Please Stand By)

Please Stand By

映画レビュー

この映画の見どころは、「アイ・アム・サム」などで名子役として名を上げたダコタ・ファニングが大人のしかも自閉症というウェンディ役で出演していること。最近は妹のエル・ファニングの活躍が目立って、なんか影が薄くなっているようなダコタの巻き返しがあるかどうか?

もう一つは、スタートレックとの関連性。スタートレックの脚本のコンテストがあって、ウェンディがそれに応募するが、バイト先の同僚たちとのクイズごっこでウェンディがスタートレックの細部まで熟知していることが示される。これが伏線としてあとで効いてくる。

映画の後半は締切に間に合うよう原稿を届けるためにウェンディがハリウッドまで独力でバス旅行するロードムービーになるが、これは彼女が書く脚本の中でエンタープライズ号を失い傷ついたスポックとカークが2人で旅をするのと重なる。また、感情表現が苦手なスポックを自閉症の自分と重ね合わせているようにみえる。

原題の「Please Stand By」は映画ではウェンディが興奮状態になったときに落ち着くためのルーティンのキーワードとして使われているが、スタートレックではエンタープライズ号乗員に対してしばしば使われる「そのまま待機」という放送での司令の言葉らしい。

逃走中のウェンディをたまたま発見した2人の警官のうち1人が極端なトレッキーで、ウェンディとクリンゴン語で会話するシーンがある。テレビ番組のスタートレックではクリンゴン人も英語を喋っていたが、映画化にあたりクリンゴン語が考案され、クリンゴン人はクリンゴン語を喋っていたというのは知っていた。だが、映画に必要な語彙だけが考案されたのだろうから、ウェンディとオタク警官がクリンゴン語で会話するのはやりすぎやろと思った。ところが調べてみると、クリンゴン語の作成には言語学者が噛んでいて、一部のマニアでは実際にクリンゴン語で会話することができると知って驚いた。Wikipediaによると、Googleでは検索の表示言語をクリンゴン語にできたり、Bingではクリンゴン語への翻訳ができたりするというからかなり本格的。

ダコタ・ファニングは子役から大人の役への転換期にあるが、大作ではなくこのサイズの映画でオタクの自閉症役というのは良かったのではないだろうか? 海外版のオリジナルのポスターではあまり美人に写っていないが、演技ができる女優として再出発の意思が感じられるような気がする。一方で日本のポスターは彼女の可愛らしさを全面に出そうというようにも取れる。映画の中では使われなかったが、オリジナル版ポスターでのバルカン人の「長寿と繁栄を」の手のサインが日本版で無視されたのも残念なところ。

予告編

2018年に観た映画

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