イギリスの風景画家、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851)の後半生を描く映画。ターナーの絵を観たことはあるものの、どういう人だったのか予備知識なしで映画を観た。
後で経歴を調べてみると、ターナーは床屋の息子として生まれたものの、早くから才能を発揮して、24歳でロイヤル・アカデミー準会員になり、3年後に正会員、最終的にはアカデミーの副会長にまで出世している。
映画では、既に成功して名声を勝ち得た中年期からスタートするので、伝記映画でもない不思議な感じの映画。過去を連想させるものと言えば、父親の昔話と既に別れた一人目の恋人が娘を認知しないターナーをなじるシーンくらい。
この別れた恋人と結婚していたのかどうかは映画の中では明示的に語られないが、ターナーに結婚歴はなく、映画の中で知り合って最期を看取ってもらう二人目の恋人のいずれも未亡人。という訳で、ターナーの伝記を書いた人はターナーはのことを未亡人キラーと書いているらしい。スター・ウォーズのガモーリアンみたいな風体で、モテそうには見えないが。
映画では、母親が精神疾患を持っていたことが触れられていて、これが生涯結婚しなかったことと関係あるのかもしれない。また、アカデミーでのシーンでは、ターナーは愛想が悪くて粗野な感じはするものの、友人は多くてそれなりにうまくやっているように描かれている。また、自宅にギャラリーを作って作品の展示と販売をおこなうビジネスマンの才覚を持ちながら、気に入らない客からの高額の買い取りオファーをあっさり断るところなどからターナーの人物像が見えてくる。
映画の中で出てくる作品も比較的写実的なものから晩年の抽象的なものへと変遷していくところが見て取れておもしろい。ターナーが亡くなってから2〜30年後に登場する印象派のモネなどにに影響を与えたというのも成程と思える。ただし、娼婦をモデルに人物画を描くシーンでは、チラッと見えた絵の一部は素人目にもヘタクソで、風景画以外はダメだったみたい。
写生のために旅行するシーンも随所に組み込まれていて、「解体のため錨泊地に向かう戦艦テメレール号」などの風景はターナーの画風に合わせたような絵作りになっている。
Trailer
番号 | 邦題 | 原題 | 監督 | 評価 |
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32 | ターナー、光に愛を求めて | Mr. Turner | Mike Leigh | 3.5 |
31 | アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生 | Advanced Style | Lina Plioplyte | 3.0 |
30 | マッドマックス 怒りのデス・ロード | Mad Max: Fury Road | George Miller | 4.0 |
29 | 靴職人と魔法のミシン | Cobbler | Thomas McCarthy | 3.0 |
28 | スライ・ストーン | Sly Stone | Willem Alkema | 3.0 |
27 | ジェームス・ブラウン〜最高の魂を持つ男 | Get On Up – The James Brown Story | Tate Taylor | 4.0 |
26 | チャッピー | Chappie | Neill Blomkamp | 4.5 |
25 | イタリアは呼んでいる | The Trip to Italy | Michael Winterbottom | 4.0 |
24 | マジック・イン・ムーンライト | Magic in the Moonlight | Woody Allen | 4.5 |
23 | セッション | Whiplash | Damien Chazelle | 4.0 |
22 | リトル・ダンサー | Billy Elliot | Stephen Daldry | 3.5 |
21 | パレードへようこそ | Pride | Matthew Warchus | 3.5 |
20 | ディオールと私 | Dior and I | Frederic Tcheng | 3.0 |
19 | JIMI: 栄光への軌跡 | Jimi: All Is by My Side | John Ridley | 4.0 |
18 | バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) | Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance) | Alejandro Gonzalez Inarritu | 4.0 |
17 | インド・オブ・ザ・デッド | Go Goa Gone | Raj Nidimoru, Krishna D.K. | 3.5 |
16 | 女神は二度微笑む | Kahaani | Sujoy Ghosh | 4.0 |
15 | パリよ、永遠に | Diplomatie | Volker Schlondorff | 3.0 |
14 | 博士と彼女のセオリー | The Theory of Everything | James Marsh | 3.5 |
13 | イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 | The Imitation Game | Morten Tyldum | 4.5 |
12 | 妻への家路 | 帰来 | 張芸謀 | 4.0 |
11 | シェフ 三ツ星フードトラック始めました | Chef | Jon Favreau | 3.5 |
10 | フォックスキャッチャー | Foxcatcher | Bennett Miller | 3.5 |
9 | アメリカン・スナイパー | American Sniper | Clint Eastwood | 4.0 |
8 | おみおくりの作法 | Still Life | Uberto Pasolini | 3.0 |
7 | エクソダス 神と王 | Exodus: Gods and Kings | Ridley Scott | 3.5 |
6 | ドラフト・デイ | Draft Day | Ivan Reitman | 2.5 |
5 | 今日の映画 – 特捜部Q 檻の中の女 | Kvinden i buret | Mikkel Norgaard | 3.0 |
4 | KANO 1931海の向こうの甲子園 | KANO | 馬志翔 | 3.5 |
3 | ジミー、野をかける伝説 | Jimmy’s Hall | Ken Loach | 3.5 |
2 | シン・シティ 復讐の女神 | Sin City: A Dame to Kill For | Robert Rodriguez, Frank Miller | 3.5 |
1 | 毛皮のヴィーナス | Venus in Fur | Roman Polanski | 4.0 |