ジミ・ヘンドリックスの伝記映画。といっても映画で描かれるのは、ジミが無名のギタリストからイギリスデビューを経てアメリカへの凱旋とスターへの道を駆け上がる1966年〜1967年の2年間。
ジミを演じるのは、アンドレ3000というヒップホップのミュージシャン。最近は俳優として活動しているらしいが、初めて見る人。この映画のために左利きのギターの猛特訓をしたというが、にわか仕込みの左利きとは見えない熱演。
ロックやブルースのミュージシャン物の伝記映画は、大抵無名時代から始まって、最初は謙虚やのに売れるに従って傲慢になって酒やドラッグに溺れた末に転落していくか、踏みとどまって名声を保つというパターンが多い。
一方、この映画のジミは売れていない時でも傍若無人で、無名時代にジミを発見してマネージャーになるチャス・チャンドラーに引きあわせたり、いろいろと世話を焼いてくれた恩人のリンダ・キース(ローリング・ストーンズのキース・リチャーズの当時のガールフレンド)をあっさり袖にして、キャシー・エッチンガムと付き合ったり。さらに別の女と浮気したりして大物ぶりを発揮する。
もっともリンダ・キースと恋人関係にあったという事実はないみたいで、映画でもはっきりとは描かれていない。ただ、映画ではジミに関わる3人の女性にかなりの時間を割り当てていて、その分演奏のシーンが思ったより少ないので期待していた内容とちょっと違ったかなという印象。
リンダがキース・リチャーズのイニシャル入りのギターを勝手に持ちだして自分のギターを買えなかったジミに与えるというシーンもある。このギターはその後二人の間を行ったり来たりするが、その際に手荷物預かりの札でやりとりするのは事実やったかどうか分からんけど、演出として洒落てる。
映画の中で演奏シーンが少ないのは、ジミの遺産管理団体がオリジナル曲を使うことを許可しなかったということも理由の一つと思われる。したがって、映画ではパープル・ヘイズなどオリジナル曲が演奏されないが、上映館の売店では「パープルHeys」という名のオリジナルドリンクが売られていた。
演奏がカバー曲に限られてしまったのは映画にとっては制約でしかないが、そこを逆手に取って他のミュージシャンとの接触シーンがいくつか組み入れられているのは面白い。
特に、渡英前から会いたいと行っていたエリック・クラプトンは自分のライブの舞台にジミを飛び入りで上げて演奏させたところ、その腕前に衝撃を受けて楽屋に引き込んでしまったという逸話のシーンなど、本人がこの映画を観たらどう思うかなど想像するのも楽しい。このクラプトンを演っていた俳優、名前もしらんけど若いころのクラプトンに結構似てる。
結果として、ガールフレンド(リンダ・キース)をジミに取られたことになるキース・リチャーズは、リンダ・キースの父親に愚痴って介入させるシーンがあって、本人は見たくないやろと思う。
ビートルズのポールとジョンがジミの演奏を聴きに来るシーンもある。ここではジミが発売直後の「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のレコードを楽屋に持ってきて、僅かな練習時間でいきなりオープニングに演奏してしまう。
そんな風に、有名ミュージシャンや音楽関係者が多数登場して結構楽しめる。ここまでやるなら、フーも出して欲しかったところ。残念ながら、フーと演奏順番をめぐって揉めたというモンタレー・ポップ・フェスティバルへの登場直前が映画のラストシーン。
Trailer
番号 | 邦題 | 原題 | 監督 | 評価 |
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19 | JIMI: 栄光への軌跡 | Jimi: All Is by My Side | John Ridley | 4.0 |
18 | バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) | Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance) | Alejandro Gonzalez Inarritu | 4.0 |
17 | インド・オブ・ザ・デッド | Go Goa Gone | Raj Nidimoru, Krishna D.K. | 3.5 |
16 | 女神は二度微笑む | Kahaani | Sujoy Ghosh | 4.0 |
15 | パリよ、永遠に | Diplomatie | Volker Schlondorff | 3.0 |
14 | 博士と彼女のセオリー | The Theory of Everything | James Marsh | 3.5 |
13 | イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 | The Imitation Game | Morten Tyldum | 4.5 |
12 | 妻への家路 | 帰来 | 張芸謀 | 4.0 |
11 | シェフ 三ツ星フードトラック始めました | Chef | Jon Favreau | 3.5 |
10 | フォックスキャッチャー | Foxcatcher | Bennett Miller | 3.5 |
9 | アメリカン・スナイパー | American Sniper | Clint Eastwood | 4.0 |
8 | おみおくりの作法 | Still Life | Uberto Pasolini | 3.0 |
7 | エクソダス 神と王 | Exodus: Gods and Kings | Ridley Scott | 3.5 |
6 | ドラフト・デイ | Draft Day | Ivan Reitman | 2.5 |
5 | 今日の映画 – 特捜部Q 檻の中の女 | Kvinden i buret | Mikkel Norgaard | 3 |
4 | KANO 1931海の向こうの甲子園 | KANO | 馬志翔 | 3.5 |
3 | ジミー、野をかける伝説 | Jimmy’s Hall | Ken Loach | 3.5 |
2 | シン・シティ 復讐の女神 | Sin City: A Dame to Kill For | Robert Rodriguez, Frank Miller | 3.5 |
1 | 毛皮のヴィーナス | Venus in Fur | Roman Polanski | 4.0 |