映画レビュー
基本的に映画は映画館で観ることにしているが、この映画は例外。というのも、この作品はNetflixのオリジナル作品で劇場公開されておらず、Netflixでしか観れないため。
劇場公開はされていないが、2017年のアカデミー賞の作品賞にノミネートされている。アカデミー賞ノミネート作品の殆どが日本未公開なのに、この作品はNetflixで字幕付きで観ることができる。
舞台はテキサス、親から受け継いだ農場を借金の抵当で銀行に取られそうになっている兄弟が銀行強盗を働き、それをテキサス・レンジャーの2人が追うという流れ。「come hell or high water」は「何が起こっても」という意味なので、原題はこれをもじったもの。邦題の「最後の追跡」はジェフ・ブリッジス演じるテキサス・レンジャーの一人が定年目前でこの事件を担当することになったので、現役で最後のという意味と思われる。
ジェフ・ブリッジスは若い頃はにやけた演技の下手な俳優というイメージだったが、歳をとってがぜん良くなってきた。「トゥルー・グリット」の保安官役も良かったが、この映画ではネイティブアメリカンとメキシコ人との混血の相棒を禁止用語連発でしつこくからかい続けて、それでいて嫌な感じにならないところなんか上手い。ネイティブアメリカンに関しては、別の場面でもコマンチの末裔の人とのちょっとした諍いのシーンが出てくるが、人種差別的な出し方でなく「草原の支配者」というポジティブなイメージで締めくくっている。
強盗兄弟の弟はクリス・パイン。スタートレックのイメージが強かったが、「ザ・ブリザード」の船長役でSF以外の映画でもやれるところを見せた。今回は、髭面で強盗という新しい役に挑んでいるが、なかなか良い感じ。 あと、知性的な弟と違って、粗野で前後を考えずに行動してしまう兄の役をやっていたベンフォスターも意外にに良かった。
最近はSFや時代物でない普通の映画でもCGを駆使する傾向にあるなか、久しぶりに現地ロケでカメラで撮影する昔ながらの映画を観たような気がした。特に、テキサスの地平線が見えるような広大な景色が映画にスケール感を与えている。ただ、道路脇の看板は「ローン返済」とか景気の悪いものばかりで、町も活気がないのはトランプを大統領にした世相を反映しているようにも思える。
Netflixは映画製作では新参者やけど、これからの映画造りを変えていくのではと思わせる一本。
映画の中で強盗に入る銀行は「Texas Midlands Bank」という架空の銀行。この名前は、かつてイギリスの4大銀行の一つで、HSBCに買収された「Midland Bank」を連想させる。
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2017年に観た映画
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