今日の映画 – セル(Cell)

Cell

映画レビュー

スティーヴン・キングは好きな作家。おそらく、映画やテレビドラマの原作となった小説の数ではダントツで一番ではないかと思う。ただ、その映画の出来栄えは、名作クラスから低予算のB級というかC級と言って良いようなものまで千差万別。これはキングがホラー作家として売り出して、成功した後も得意なジャンルの一つとして書き続けていること、そしてその作品数が多いことから気軽に低予算のホラー映画の題材として使われているのかもしれない。

皮肉なことに、名作と言って良い映画は「スタンド・バイ・ミー」や「ショーシャンクの空に」など、ホラーではなくヒューマンドラマ。ホラー寄りの映画では「シャイニング」があるが、これは監督のスタンリー・キューブリックが原作を無視して自分の好きなように作った映画で評価は分かれるところ。キングは、「シャイニング」の映画が気に入らなかったようで、20年後に自ら監督・脚本・出演までしてテレビドラマ化しているが、評価は酷かったらしい。

実は、キングはその前1986年にも「地獄のデビルトラック」という映画で監督・脚本を手がけていて失敗しているのに懲りていなかったという訳。どうやら小説家としての才能はあっても、映画を作る方の才能は無かったというのが通説。そういうわけで、この「セル」という映画の脚本にキングの名前が上がっていたので一抹の不安を感じながら映画館へ足を運んだ。

結果からいうと、名作とは言ないが割りと気に入った。全体としてはキング原作の失敗系の低予算映画の雰囲気を残しつつ、観れる映画にまとまっている。主演にジョン・キューザックとサミュエル・L・ジャクソンという一流どころを配して、予算をこの2人のギャラに集中投下したことが功を奏したといえる。もし、予算をケチってこの2人に無名の俳優を充てていたらおそらく残念なことになっていただろう。

ストーリーは今風のゾンビ物といって良いもので、携帯電話を使った人が突然暴れだすという内容で、キング物に良くあるその現象の原因や犯人などには一切触れず、突然起こった現象に主人公たちが振り回されながらも前向きに進んでいくというもの。ある意味荒唐無稽ではあるが、そこにこだわってはいけない。つっこみどころとしては、殆どの人がゾンビ化しているので発電所なども停まっているはずなのに、行く先々で電気が使えるとか色々あるが気にしないこと。演出や撮影などに特に見るべきものはないが、主人公2人の個性で回しきったという感じ。それはそれで嫌いではない。

ラストは一応ハッピーエンドかと思ったが、一番最後のシーンで「あれっ」と思わされる。よう分からんけど、2種類のエンディングを用意して、好きな方を選べということか?

 

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