今年初めての中国映画。監督のチャン・イーモウ(張芸謀)は観ては居ないけど有名な「紅いコーリャン」で監督デビューして、「HERO」、「LOVERS」、「王妃の紋章」などを撮った人。この映画は映画館で予告編を何度か観て、最近の大作ブームの中で落ち着いた感じの作品という印象。
話の筋は文化大革命で大学教授の職を追われ、20年間強制労働させられていた夫が名誉回復して家に戻ってきたら、妻は記憶障害となっていて夫を認識できず、帰ってくるはずの夫を駅に迎えに行きづづけるというもの。
夫役のチェン・ダオミン(陳道明)は、10年の懲役後に家族に合うために脱走して、警察の目を潜りつつ浮浪者のような風体でエネルギッシュに動きまわる映画の前半部分と名誉回復して戻ってきた後の穏やかな姿を対照的に演じ分けている。
妻役のコン・リー(鞏俐)はデビュー作が「紅いコーリャン」。チャン・イーモウ監督作品以外にもハンニバル・ライジングで少年ハンニバルを教育するレディ・ムラサキの役を演ったりしている。この映画では記憶障害の妻役を熱演。戻ってきた夫があの手この手を尽くして自分を思い出させようとして、その結果思い出しそうになった時の目の輝きが、あるところでふっと消えて混沌に戻っていくところの微妙な表情がすごい。
映画の主要登場人物は娘役の新人女優チャン・ホエウェンを加えた3人。娘は父親が逮捕された時は3歳。10年後に父親が脱走犯となったことで革命バレエの主役を逃してしまう。それがその後10年間家族の中にしこりとなって残ってしまう。
映画としては派手さはないけど、脱走してきた夫と扉の向こうに夫が居ると分かっていながら何も出来ない妻の場面は記憶される名シーンと思う。あと、逃亡犯の夫が逮捕される場面での効果音の使い方に意表を突かれた。
映画冒頭の革命バレエの小銃を持って踊る練習シーンはなんとなく北朝鮮を連想してしまう。現代の中国も決して民主的とは言えないと思うが、文化大革命の時代はえらい時代やってんやなと思う。
中国は日中戦争の被害者であるけど、その後の文化大革命で数十万人がなくなって、1億人が影響を受けたというからその規模は想像を超えている。程度の差はあれ、1億人の人がこの映画と同じような苦労をしたというのは気の毒と思うし、その対比として日本は平和やなと思う。
Trailer
番号 | 邦題 | 原題 | 監督 | 評価 |
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12 | 妻への家路 | 帰来 | 張芸謀 | 4.0 |
11 | シェフ 三ツ星フードトラック始めました | Chef | Jon Favreau | 3.5 |
10 | フォックスキャッチャー | Foxcatcher | Bennett Miller | 3.5 |
9 | アメリカン・スナイパー | American Sniper | Clint Eastwood | 4.0 |
8 | おみおくりの作法 | Still Life | Uberto Pasolini | 3.0 |
7 | エクソダス 神と王 | Exodus: Gods and Kings | Ridley Scott | 3.5 |
6 | ドラフト・デイ | Draft Day | Ivan Reitman | 2.5 |
5 | 今日の映画 – 特捜部Q 檻の中の女 | Kvinden i buret | Mikkel Norgaard | 3 |
4 | KANO 1931海の向こうの甲子園 | KANO | 馬志翔 | 3.5 |
3 | ジミー、野をかける伝説 | Jimmy’s Hall | Ken Loach | 3.5 |
2 | シン・シティ 復讐の女神 | Sin City: A Dame to Kill For | Robert Rodriguez, Frank Miller | 3.5 |
1 | 毛皮のヴィーナス | Venus in Fur | Roman Polanski | 4.0 |