2015年最初の映画はロマン・ポランスキー監督作品。ポランスキーというと「チャイナタウン」、「戦場のピアニスト」あたりが代表作と言われるが、「ローズマリーの赤ちゃん」とか、最近では「おとなのけんか」など、作風の異なる映画を撮っていて作品の幅が広い。
この映画の大元の原作はレオポルド・フォン・ザッヘル・マゾッホの小説「毛皮を着たヴィーナス」。それをアメリカ人の劇作家が戯曲に仕立てたものを今回映画化した。
「おとなのけんか」も舞台からの映画化で、登場人物は4人だけという映画やったけど、今度の登場人物は2人だけ。場面も映画の始めと終わりの僅かなシーンを覗いて殆ど劇場の中だけ。
登場人物の1人はポランスキーの奥さんでもあるエマニュエル・セニエ演ずる売れない役者のワンダ。もう一人はマチュー・アマルリック演じる演出家のトマ。映画の舞台となる劇場は、トマが脚色した脚本(これが「毛皮を着たヴィーナス」)の主演オーディションの会場で、終わってしまったオーディションに大遅刻のワンダがやってくるところから映画は始まる。
そういう訳で、最初の2人の力関係は完全にトマの方が上やけど、オーディションを始めて、トマが相手役を務めて進めていくうちに逆転してワンダがトマを支配してしまうという話。
映画は96分とやや短め。しかし、この間2人はそれぞれの役のセリフをしゃべり続けるので、映画のセリフの量はかなり多い。また、役を演じる合間に2人の会話が挟まってくるので少々ややこしい。もちろん、話し方のトーンが違うのでセリフなのか会話なのかは分かるねんけど、映画が進むにつれて、演技と現実との境目があやふやになってくる。まあ、これは予想の範囲内やけど。
意外やったのは劇の最後の方になって男女の役を交換するところ。それでもワンダの支配は変われへんねんけど。原作を読んでないが、これは映画でストーリーを変えてるのかもしれん。
映画の中での売れない女優ワンダは粗野で教養がないキャラクターやのに、オーディション用の台本を完全に暗記していて劇中の役柄を完全に演じ切ってしまう。また、トマの婚約者のことをよく知っていたり、不思議なことがいろいろある。なので、現実感はいまひとつなとこがあるけど、ストーリー上必要という意外に80歳を越えてまだ元気なポランスキーの遊び心みたいなもんを感じる。
最初の方で遅刻してきたワンダが諦めて帰ろうとしたときに、親切心からか優しい言葉を掛けたことがトマの失敗。ここから終始ワンダのペースにはめられてしまった。親切心もほどほどにという教訓。
飲まんかったけど、この映画の上映中は写真のような特別ドリンクあり。
Trailer
番号 | 邦題 | 原題 | 監督 | 評価 |
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1 | 毛皮のヴィーナス | Venus in Fur | Roman Polanski | 4 |