今日の映画 – ヘイトフル・エイト(The Hateful 8)

クエンティン・タランティーノ監督の最新作。映画の冒頭は広大な景色を背景に、タイトルやクレジットは昔の西部劇調の色数が少なくてちょっとかすれた感じのする例のフォント。既成概念の西部劇と違うのは、タイトルの背景の駅馬車が走る景色が広大な原野やけど雪景色ということ。

The Hateful Eight

タイトルの「エイト」は、雪で山小屋に閉じ込められる映画の主要人物が8人というのは当然として、映画のタイトル表示のところで、「The 8th Film by Quentin Tarantino」とあるように、自身の8作目と掛け合わされていると思われる。それに加えて、ジョン・スタージェスの「荒野の七人(Magnificent Seven)」を意識した命名で、その先には黒澤の「七人の侍」への思い入れがあるような気がする。

8人の主要人物がいるので、個性ある面々8人がクレジットされているが、このところタランティーノに重用されているサミュエル・L・ジャクソンが一人飛び抜けた役柄をもらっている感じ。

保安官役のウォルトン・ゴギンズは「ジャンゴ 繋がれざる者」でも使われていたらしいが記憶に無し。でもこの映画ではええ感じ。

若いころは精悍な役が多かったブルース・ダーンは、昨年の「ネブラスカ」で枯れたおじいちゃんで存在感を見せたが、この映画でも飄々とした演技を見せる。

しかし、なんといっても8人の中で紅一点、カート・ラッセルのバウンティハンターに逮捕されて誤送される指名手配犯役のジェニファー・ジェイソン・リーがなかなかよろしい。登場時点で既に目の周りに青タンつくって、事あるごとにカート・ラッセルにどずかれたり、肘打ちを食らわされるのに、落ち込みもせずに他人の会話に茶々入れてくる不思議なキャラクター。全然美人でもないし、ちょうどビデオで見ている「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」の狂信的なキリスト教徒のディファニーを連想させる風貌なのになぜか憎めない。他に、めぼしい映画に出てないので、これを機会にしてもっと出てきて欲しいと思わせる女優。

主要登場人物8人はポスターと照合すると誰だか分かるけど、予備知識なしに観ると駅馬車の御者など8人に含まれない脇役との選別がややこしい。結末に至る謎解きでちょっともつれて結局最後はタランティーノらしい殺し合い。ここでも、ジェニファー・ジェイソン・リーがひと頑張りするところが見物。

久しぶりに長時間の映画やったけど、中だるみなしに最後まで引っ張っていかれた。やっぱりタランティーノはええね。


Trailer


2016年に観た映画

番号 邦題 原題 監督 評価
11 ヘイトフル・エイト The Hateful Eight Quentin Tarantino 4.5
10 マネー・ショート 華麗なる大逆転 The Big Short Adam McKay 4.0
9 キャロル Carol Todd Haynes 4.5
8 サウルの息子 Saul fia Laszlo Nemes 3.5
7 ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります 5 Flights Up Richard Loncraine 3.0
6 独裁者と小さな孫 The President Mohsen Makhmalbaf 4.5
5 ブラック・スキャンダル Black Mass Scott Cooper 4.0
4 消えた声が、その名を呼ぶ The Cut Fatih Akin 4.0
3 完全なるチェックメイト Pawn Sacrifice Edward Zwick 4.0
2 ブリッジ・オブ・スパイ Bridge of Spies Steven Spielberg 4.5
1 スター・ウォーズ/フォースの覚醒 The Force Awakens J.J. Abrams 4.8
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