今日の映画 – ハドソン川の奇跡(Sully)

事実に基づいた映画が必ずしも成功しないのは、最近見た「ニュースの真相」が良い例。

Sully

しかし、この映画は逆に成功例と言って良い。2009年に起こったUSエアウェイズ1549便のハドソン川への緊急着陸と冬場にも関わらず乗客・乗員から死者を出さなかった救助は日本にも報道された。このニュースを聞いて、全員無事で良かったと思ったが、その裏側で知らなかったドラマがあったことをこの映画を観て初めて知った。

事故に際してハドソン川へ着陸することを決断して、それをやってのけた機長がヒーローになっていることは伝え聞いていたが、その後国家運輸安全委員会で事故当時の判断が間違っていたのではないかという嫌疑を掛けられて辛い立場にあったことなど全く知らなかった。

40年の経験がある機長を、飛行機の操縦もできない委員たちが机上論で裁くという見方によっては異常な環境で、全てを失いかねない状況で、機長は機転を効かせて切り抜ける。機長を糾弾しようとした委員会の面々は、この映画では悪役で、それとの対比で機長の素晴らしさがより浮かび上がるという構図。しかし、委員会をそういう方向へ動かしたのは何だったのだろうかと、ふと思った。もしかしたら、機材の不備の疑いを掛けられたくないエアバス社が機長に責任を押し付けようとしたのかもしれないし、それ以外の要因があったのかもしれないが映画の中では語られない。

見方を変えて、同じことが日本で起こったとしたら、機長をヒーロとして祭り上げることはあっても、その責任を追及しようということにはならなかったのではないだろうか? どちらが良いとは言えないが、物事をなあなあで済ませる日本と論理的に突き詰めようとするアメリカの違いみたいなものを感じてしまう。

こういうストーリーなので、出演者は限られて、その中でも機長役のトム・ハンクスの比重は大きい、というかトム・ハンクスに負っている映画と言っても良いと思う。トム・ハンクスは不思議な俳優で、アカデミー主演男優賞を2回受賞しているのを忘れてしまうくらい普通の俳優に見えるというか名優という感じがしない。演技は切れ味の鋭い刃物というのではなく、どちらかというと切れ味鈍い鉈という感じ。それでいて、出演した映画をそこそこのレベルへ引き上げてしまうという印象。おそらく監督からすると、どんな役をやらせても期待通りの結果を出してくれる頼もしい俳優ではないだろうか?

そして、その監督は、もはや誰もが名監督と思っているクリント・イーストウッド。決して奇をてらうようなことはせず、オーセンティックな撮り方を続けて独自の境地に達した感がある。この映画でも、余分な説明やシーンが全く無く、それでいて観ている者に情報の欠如を感じさせないところでの描写を気負うこと無く普通にやってしまっているのが凄いところ。今年86歳。まだまだ元気で取り続けてもらいたい。


Trailer


2016年に観た映画

番号 邦題 原題 監督 評価
44 ハドソン川の奇跡 Sully Clint Eastwood 4.5
43 ソング・オブ・ラホール Song of Lahore Sharmeen Obaid-Chinoy 4.0
42 スーサイド・スクワッド Suicide Squad David Ayer 4.0
41 イングリッド・バーグマン 愛に生きた女優 Jag ar Ingrid Stig Bjorkman 4.0
40 ティエリー・トグルドーの憂鬱 La Loi du Marche Stephane Brize 3.5
39 イレブン・ミニッツ 11 Minut Jerzy Skolimowski 3.5
38 ニュースの真相 Truth James Vanderbilt 3.0
37 バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 Batman v Superman: Dawn of Justice Zack Snyder 3.5
36 ブルックリン Brooklyn John Crowley 2.5
35 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 Trumbo Jay Roach 4.0
34 AMY エイミー Amy Asif Kapadia 4.0
33 帰ってきたヒトラー Er ist wieder da David Wnendt 4.0
32 教授のおかしな妄想殺人 Irrational Man Woody Allen 4.5
31 レジェンド 狂気の美学 Legend Brian Helgeland 3.5
30 デッドプール Deadpool Tim Miller 4.5
29 マネーモンスター Money Monster Jodie Foster 4.0
28 サウスポー Southpow Antoine Fuqua 3.5
27 マイケル・ムーアの世界侵略のススメ Where to Invade Next Michael Moore 3.5
26 ヘイル、シーザー! Hail, Caesar! Joel Coen,
Ethan Coen
4.0
25 マジカル・ガール Magical Girl Carlos Vermut 4.5
24 レヴェナント:蘇えりし者 The Revenant Alejandro González Iñárritu 4.0
23 アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち The Eichmann Show Paul Andrew Williams 3.5
22 ボーダーライン Sicario Denis Villeneuve 4.0
21 ミケランジェロ・プロジェクト The Monuments Men George Clooney 2.5
20 Johnny Winter: Down & Dirty Johnny Winter: Down & Dirty Greg Olliver 3.5
19 スポットライト Spotlight Tom McCarthy 4.5
18 さざなみ 45 Years Andrew Haigh 4.5
17 ルーム Room Lenny Abrahamson 3.5
16 最高の花婿 Qu’est-ce qu’on a fait au Bon Dieu? Philippe de Chauveron 3.5
15 人生は小説よりも奇なり Love is Strange Ira Sachs 3.5
14 レッキング・クルー 〜伝説のミュージシャンたち〜 The Wrecking Crew Denny Tedesco 4.0
13 リリーのすべて The Danish Girl Tom Hooper 4.5
12 SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁 Sharlock: The Abominable Bride Douglas Mackinnon 2.5
11 ヘイトフル・エイト The Hateful Eight Quentin Tarantino 4.5
10 マネー・ショート 華麗なる大逆転 The Big Short Adam McKay 4.0
9 キャロル Carol Todd Haynes 4.5
8 サウルの息子 Saul fia Laszlo Nemes 3.5
7 ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります 5 Flights Up Richard Loncraine 3.0
6 独裁者と小さな孫 The President Mohsen Makhmalbaf 4.5
5 ブラック・スキャンダル Black Mass Scott Cooper 4.0
4 消えた声が、その名を呼ぶ The Cut Fatih Akin 4.0
3 完全なるチェックメイト Pawn Sacrifice Edward Zwick 4.0
2 ブリッジ・オブ・スパイ Bridge of Spies Steven Spielberg 4.5
1 スター・ウォーズ/フォースの覚醒 The Force Awakens J.J. Abrams aigh 4.8
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