今日の映画 – SING シング(Sing)

「SING シング」のポスター

映画レビュー

久しぶりのアニメ。封切りされてから4週目になるが、観客動員数は4週連続1位という人気。ちなみに2位は「モアナと伝説の海」、3位は「ゴースト・イン・ザ・シェル」とアニメ、特撮物が上位を独占している。

日本では字幕版よりも吹き替え版の上映が多いことからすると、アニメの出来の良さがヒットの一因と思われる。たしかにアニメの技術の進歩はめざましいが、この映画を語るには豪華な声優陣と吹き替えを含めて歌のクオリティの高さを忘れてはいけない。

メインキャラクターで劇場のオーナーでもあるコアラのバスター・ムーンは歌わないが声はマシュー・マコノヒー。豚の主婦のロジータはリース・ウィザースプーンで吹き替え無しで歌っている。このあいだ「ゴースト・イン・ザ・シェル」で派手なアクションを見たばかりのスカーレット・ヨハンソンは知らなかったけど歌える人で、ヤマアラシのアッシュ役で声を披露している。そして、芸達者なセス・マクファーレンはネズミのマイク役でセリフと歌で魅せる。アニメにこれだけの声優を使うだけでも大盤振る舞いだが、ゾウのミーナの声をやってるトリー・ケリーやゴリラのタロン・エガートンもめちゃくちゃうまい。さらに、オーディションのシーンでは15秒交代くらいで様々な動物が歌うがみんなイケてるところがすごい。改めてアメリカの俳優、歌手の層の厚さを実感した。

アニメーションに関して思ったのは日本のアニメとアメリカのアニメの違い。日本のアニメはセル画を手書きする家内制手工業みたいなところから出発して技術を高めてきたので、今では3Dのモデリングを行っていても、そこから敢えて2Dのセル画風の画像に落として製作しているものが多い。ドラえもんの最新作など一部を除いて、「鉄腕アトム」の頃から慣れ親しんだセル画の雰囲気で作るのが当たり前のようになっている。一方、アメリカはディスニーがアニメで成功して以来、セル画で3次元的な見せ方をしようという努力なんかしないで、いきなりコンピュータで3Dの画像を作る方へジャンプした。したがって、アメリカの最近のアニメの歴史はコンピュータとソフトウェアの技術革新の歴史と重なる。

例えば、1995年に作られたディスニーの「トイ・ストーリ」ではキャラクターの顔は人も人形もほとんどがツルンとしたプラスチックかせいぜいフェルトのようなテクスチャだった。ヤマアラシのおもちゃもこんな感じ。

「トイ・ストーリ」の一場面

そして、今年のアカデミーのアニメーション賞を獲得したディスニーの「ズートピア」では、動物の毛の一本一本まで描いている。

「ズートピア」の一場面

動物物ということではこの映画も「ズートピア」に近いが、アニメの精緻さでは「SIMG シング」を製作したユニバーサル・ピクチャー/イルミネーション・エンターテインメントの技術はディスニーに追いついたか追い越したかもしれない。例えば、映画終盤でネスミのステージで上空にヘリコプターが来てあおられた風でネズミが飛ばされそうになるシーンではネズミの毛が風圧に翻弄されるようなところまで見せている。静止した絵で見てもヤマアラシのアッシュの棘の精緻な映像と「トイ・ストーリ」のヤマアラシを比べると歴然とした差がある。

という訳で、この映画は実力派の声優、クオリティの高い歌、アニメのテクノロジーと三拍子揃っている。この映画を超えるアニメはしばらく出てこないのではと思うくらい。

最後に、バスター・ムーンが映画の中で3回言う「All creatures great and small, welcome to …」というところの「All creatures great and small」はアメリカのテレビドラマの題名。アメリカ人なら、ここでどっと来るところかも。

Trailer

2017年に観た映画

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