今日の映画 – サイドマン スターを輝かせた男たち(Sidemen: Long Road to Glory)

Sidemen: Long Road to Glory

映画レビュー

「sideman」を辞書でひくと「伴奏楽器演奏者」。今まで「バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち」、「レッキング・クルー~伝説のミュージシャンたち~」、「黄金のメロディ マッスル・ショールズ(Muscle Shoals)」など、音楽界で実力がありながら脚光を浴びることなく裏方として支えてきた人たちを題材にした映画の流れ。

映画で取り上げられているのは、パイントップトップ・パーキース(ピアノ)、ウィリー“ビック・アイズ”スミス(ドラムス)、ヒューバート・サムリン(ギター)の3人。この映画を観るまで3人共知らなかったが、シカゴ・ブルースのビッグスターのマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフのバンドのメンバーだったり、ツアーに同行して演奏していた人たち。

そもそもマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフなどのブルースの大御所は地元アメリカではなくイギリスで人気が出て、ローリング・ストーンズなどがカバーした曲が逆輸入されてアメリカで再発見された経緯がある。そして、その延長線上で発見された3人のサイドマンについてインタビューで熱く語るのは、エリック・クラプトン、キース・リチャーズ、スーザン・テデスキ、デレク・トラックス等々の豪華メンバー。

映画の中で「バンドはリーダーがいて、あとはみんな裏方だ」というセリフがあったが、60~70年代のバンドではマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフなどのリーダーが富と名声を独り占めしてサイドマンにはあまり恩恵がなかったようだ。大御所はリーダーの立場をエンジョイするだけで、それを後輩に継承することなく死んでしまうので残されたメンバーは路頭に迷うことになる。特に90年代はブルースの人気が落ちて3人共生活が苦しかったようだ。

その後、ブルースの人気が回復してパイントップは75歳を超えて最初の自分のアルバムを出すなど演奏を続けて晩成している。パイントップの晩年の映像ではきちんとした身なりをした可愛らしいおじいちゃんという感じ。好きな食べものはマクドナルドのハンバーガーだと語っていた。十分長生きしているけど、健康のために食べ物を選ぶという生活とは無縁だったんだろう。一番気の毒だったのはヒューバート・サムリンでウルフが死んだ後、貧困に苦しみ酒やドラッグに走ったが、この映画のインタビューでは立ち直っていたのが救い。

映画の最後では、パイントップとウイリーの共同アルバム「Joined at the Hip」が2011年のグラミー賞で「Best Traditional Blues Album」を受賞するシーンがある。この年に3人共亡くなっているので、ぎりぎり間に合ったというところ。この映画の製作年は2016年になっている。演奏やインタビューの映像が散逸するまえに映画になって良かった。

映画を観終わって、「Joined at the Hip」を聞いてみた。派手さはないが、いずれの曲も良い感じ。特にスローテンポな曲がヴィンテージっぽくて良い。このアルバムでは、ウイリーはドラムスを息子に譲り、歌とハーモニカを担当しているらしいが、これも良い。

予告編

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