今日の映画 – オン・ザ・ミルキー・ロード(On the Milky Road)

オン・ザ・ミルキー・ロードのポスター

映画レビュー

ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のエミール・クストリッツァ監督・主演作品。キャプションで「3つの実話と多くの寓話からなる物語」と示されるが、一言で言うと今まで観たことのないような不思議な映画。

映画の冒頭から、田舎の村で塹壕を掘って戦争状態であることが分かるが、どこの国かは明らかにされない。しかし、セルビア語を話せるというようなセリフがあるので、旧ユーゴスラビア内戦を連想する。映画の前半は牧歌的なのんびりしたシーンもあるが、戦争シーンでは弾が飛び交い、近所で砲弾が炸裂する。その割には、戦争映画の緊張感が無いのは、誰かが死ぬこともなければ、けがをすることもないということもあるが、主人公コスタが、危険な場所を平然とロバに乗って動き回るちょっとコミカルなところからくる安心感のせいかなと思う。

逆に戦争シーン以外の、壊れているのに変な動きをして、歯車に人を巻き込む大時計、映画を通して出番が多い動物たちの挙動がなんか観ている者に不安な気持ちを抱かせる。とくに動物は、屠殺場へ引かれている豚、その豚の血に次々と飛び込むがちょうの群れ、音楽に合わせて肩を振るハヤブサ、鏡に移る自分に体当たりを繰り返すニワトリ、ミルクを飲む蛇などを見せられて、なんか落ち着かない気持ちになったところでエミール・クストリッツァ監督の術中に落ちてしまっていたような気がする。

映画の中頃で戦争が終結し、戦場から帰ってくる兄のために花嫁(モニカ・ベルッチ)を調達し、自分はコスタとのダブル結婚式をもくろんでいるミレナが活躍するところはコメディ調。ミレナが景気付けに拳銃をぶっ放すところとかノリが良い。ところどころでスパイ風の男が写真を撮るが、これもミエミエの演出で深刻な感じなし。

ところが、映画の後半、特殊部隊が降下して村を襲撃するところから雰囲気はコロッと変わる。今まで誰も死なず、観客が油断していたところ、いきなり殺戮が始まり村は全滅、人だけでなくロバが撃たれたり、ガチョウが燃えたり、動物もやられる。このギャップで映画は終末へと向かうのかと思ったら、ここでまた予想は裏切られる。

コスタと花嫁の逃避行が始まり、3人の特殊部隊員がしつこく追跡する。これが大自然をバックに川の中、滝壺へのジャンプ、崖からの落下、草原で羊の群れに紛れるなど、延々と続く。そして、地雷原へ足を踏み入れて羊の大虐殺となるが、爆発する度に羊がポンポンと跳ね上がる様は、劇画的ですらある。

ラストは15年後の話できっちり締めくくられるが、振り返ってみると、ナンセンスコメディ、動物物、ラブストーリー、戦争物をミックスして、音楽と踊りのフレーバーを付けたような映画。それらが分離せずに、混ざって独特の雰囲気を作っている変な映画、でも悪くない。

予告編

2017年に観た映画

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