今日の映画 – KUBO クボ 二本の弦の秘密(Kubo and the Two Strings)

Kubo and the Two Strings

映画レビュー

この映画はいろいろとうんちくを語れるアニメではある。が、そういうことを抜きにして、子供から大人まで楽しめる映画。

ストーリーはシンプルで、三味線で折り紙を自由に扱うなどの魔法の力を持ちながらひっそりと隠れて住む母と息子(Kubo)が敵役の祖父と叔母に見つかり命を狙われる。生き延びるには亡き父がかつて探そうとした3つの武具が必要で、Kuboとその擁護者であるサルとクワガタの3人が件の武具を求めて旅をするというもの。ヒーローが仲間と旅をしながら敵と戦って成長するという普遍的なシナリオと家族のつながりというベタなテーマは観る人のバックグラウンドに関わらず分かりやすくて受け入れやすい。

それに加えて、この映画はアメリカ映画であるが、舞台は日本。三味線や折り紙が重要なパーツとして使われているなど日本人にとって興味深い内容になっている。その背景は、監督で製作会社ライカのCEOでもあるトラビス・ナイトが日本に滞在した経験があり、思い入れが深かったということらしい。

そういうわけで、日本の着物、建物、風習などの考証もしっかりなされていて、一部アメリカ人の日本人感が見え隠れするところもあるが、概ね違和感は感じない。強いて言えば祖父の着物がなんとなく中国風であったくらいか。日本を舞台にすることは、日本人以外の視聴者にも、ニンジャ、サムライのエグゾチックなイメージでアピールする計算があったのかもしれない。

タイトルには「二本弦の秘密」とあって、三味線なのになぜ二本なのかと見る前から思っていたが、その秘密は最後に明らかになる。このあたりの話の作りは上手い。エンドロールでの音楽を三味線版の「While My Guitar Gently Weeps」にしたのも良い。ただ、せっかく苦労して集めた3つの武具の威力が今ひとつパッとしなかったのは残念。最後の決戦の前にもう一つ戦闘シーンがあっても良かったのではと思う。

もう一つの大きな話題になったのは、アニメの制作にあたって主要部分を最新技術を駆使したストップモーションで撮っていくところ。これは登場人物などの人形を動作に合わせて少しずつ動かしながらコマ撮りしてアニメにするという気の遠くなるような作業で撮影するもの。今ではコンピューターで3Dのモデルを作り、それを自由に動かすことで実写に近い映像を作ることができるようになったが、人や物の質感は実写には及ばない。人形を使ったストップモーションは実写なのでリアルな質感で撮ることができるが、体の動きをリアルにすることはできても、人形の表情が画一的になってしまう欠点があった。ところが、この映画では人形の顔の部分を何種類も用意して、交換しながら撮影することで自然な表情の変化を実現している。

湖を船で渡るシーンの水の部分などはCGで作成して合成しているが、主人公達が乗っていた折り紙で作った船はCGかと思ったらこれも人が乗れるくらいのモデルを制作しているというので驚いた。この撮影の過程の一部はメイキング映像で見ることができる。

さらに、声の出演もシャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒー、ルーニー・マーラ、レイフ・ファインズと一流どころを揃えている。それに加えて、スター・トレックシリーズでミスタ・カトウを演っていたジョージ・タケイが村人役でキャストに加わっているだけでなく、70年代に脇役として多くの印象深い映画に出ていた今年78歳のブレンダ・バッカロも村のおばあさん役で名を連ねていて妙に懐かしかった。

Wikipediaによると、この映画の制作費は0.6億ドルで興行収入は0.74億ドルとなんとか黒字を達成している。この制作費は、もののけ姫の制作費23.5億円の約3倍。しかし、最近のピクサーやディズニーのアニメは軒並み1.5~2億ドルくらいの予算規模なので、割安の予算で制作しているといえる。その低予算でこの出来上がりの品質は素晴らしいと思う。アニメ映画の制作がピクサーとディズニーの2極化へと進んでいる傾向があるので、ライカにはこれからも頑張って欲しい。

予告編

2017年に観た映画

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