今日の映画 – ジャッキー ファーストレディ 最後の使命(Jackie)

映画「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」のポスター

映画レビュー

ほぼ全てのシーンにナタリー・ポートマンが写っている。したがって、ナタリー・ポートマンの出来に大きく依存している映画。そして、ナタリー・ポートマンは会心の演技をしていると思う。今年のアカデミー主演女優賞は「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンに持って行かれたが、ナタリー・ポートマンが獲ってもよかったんじゃないかと思う。

映画はいくつかのシーンを切り替えながら進んでいく。具体的には、(1)JFKがダラスで暗殺された直後から葬儀に至るまで、(2)後日記事を書く「ライフ」誌の記者とのインタビュー、(3)神父との会話、(4)CBSテレビで放映されエミー賞を受賞したジャッキー自身がホワイトハウスの中を案内していく番組「A Tour of the White House with Mrs. John F. Kennedy」とその撮影シーン、(5)これにJFKの暗殺前後のシーン。画面は何度も切り替わるが、それぞれのシーンに違いがはっきりしているので混乱することはない。

ちなみにオリジナルの「A Tour of the White House with Mrs. John F. Kennedy」は下のビデオ。映画の中ではオリジナルに似せてナタリー・ポートマンが演っている。オリジナルの映像は、たまたま映画を観た翌日に再放送されていたNHKの「新・映像の世紀」の中でも映画で使ったのと同じ部分が使われていて、冒頭の廊下を遠くから歩いてくるところの変な歩き方とか、特徴ある話し方などナタリー・ポートマンはかなり本人に近い。ナタリー・ポートマンの方が美人ではあるが。

映画のポイントの一つは、JFKの遺体を霊柩車で運ぶ際にジャッキーと義弟のロバートが同乗するところ。ここでジャッキーはいきなり霊柩車の運転手に「ジェームズ・ガーフィールドとウィリアム・マッキンリー」を知っているかと尋ねて運転手は知らないと答える。次に「エイブラハム・リンカーンを知っているか」と尋ねると、運転手は「南北戦争に勝利して、奴隷を解放した大統領です」と答えた。そこで、ジャッキーは即座にリンカーンの葬儀次第を調べさせ、周囲の反対を押し切ってリンカーンと同様のルートでの行進を行おうとする。

JFKを国民の意識に刷り込んで忘れられない様にするためのもう一つの方策が「ライフ」誌のインタビュー。ジャッキーはありのままの記事を書かせるのではなく、ジャッキーが国民に見せたい内容を記者に指示し、内容を検閲して公開させた。その中で引用されたのが「キャメロット」。これはアーサー王伝説で王の居城があったところで、これを題材にしたミュージカルのタイトルでもある。ケネディ家の実態は、ジョンとロバートの父親のジョセフが禁酒法時代に密造酒で大儲けしたとかマフィアと付き合っていたといわれるくらいの家だったのが、今では名家扱いになっている。これは、この「ライフ」の記事で、ホワイトハウスに住んでいた故大統領とその家族をキャメロットの城の王族に例えることで、そういうイメージを作ってしまおうとしたジャッキーの目論見通りといえる。

ところで、この映画を見た人はどう感じるのか? 感じ方は人それぞれにしても、ケネディ家を尊敬あるいは神聖視する人にとっては、「ジャッキー、ようやった!」というのかもしれない。逆に、ケネディ家に特に思い入れのない人にすれば、ジャッキーに対してネガティブな印象を持つかもしれない。この映画の作り方の上手なところは、史実を曲げられないという制約の中で、ジャッキーという人物を好む人、嫌う人どちらから見ても納得がいくところの脚本を作って、ナタリー・ポートマンがいずれの人にも受け入れられるような演技をしたということではないやろか?

JFKとその一族そして彼らを取り巻く人達の話は何度も小説や映画になって、いろいろと風説もあるが、この映画でもいくつか暗示的なセリフやシーンがある。「彼(=JFK)の友達の中にはがさつな人もいたわ。もちろんジャックは違うけど。(Just some of his friends were so crude. Jack wasn’t, of course.)」というのは、シンプルに大統領を取り巻く政財界の人たちの中に下品な人たちもいるということとも取れるが、ケネディ家とマフィアとの関係を連想してしまう。

さらに、「彼(=JFK)は時々一人荒野に出かけて悪魔の誘惑に身を晒す。でも、いつも私たちのところへ帰ってきてくれる(Sometimes he would walk into the desert alone, just to let himself be tempted by the devil. But he’d always come back to us.」というくだりでは、JFKが良き父親であったかもしれないが、良き夫では無かったのではないかと思わせる。そして、ここでの「悪魔(Devil)」の候補として真っ先に思いつくのはマリリン・モンローではないだろうか? そう考えると、映画の中でジャッキーが息子の誕生日に「Happy birthday to you …」と歌って聞かせるのは、マリリン・モンローがJFKの誕生パーティに来て歌う「Happy birthday to you …」(下のビデオ)に引っ掛けているとしか思えない。

他にも興味深いシーンはある、JFKの死後、副大統領のジョンソンが宣誓して大統領に繰り上がったら取り巻きは未亡人のジャッキーよりもジョンソンの方を向くところとか、その時は司法長官にすぎなかったロバートが大統領になったジョンソンに頭ごなしに指示するところとか、ジャッキーがホワイトハウスを去る前にジョンソン夫妻がこっそり来てカーテンの色合わせをしているシーンとか。他にも、アメリカ人にとっては予備知識があってスーッと入っていくような小ネタが仕込んであるのかもしれないが、そこまで分からないのは致し方ない。

ナタリー・ポートマン以外の俳優で出演シーンが一番多かったロバート・ケネディを演じたのはピーター・サースガード。最近見た映画では、「マグニフィセント・セブン」の悪役。ロバート・ケネディは写真でしか見ていないが、顔はあまり似てないと思う。あと知っている俳優は、神父役のジョン・ハートくらい。

Trailer

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