今日の映画 – ビール・ストリートの恋人たち(If Beale Street Could Talk)

If Beale Street Could Talk

映画レビュー

ファニーとティッシュの若い黒人カップルのラブストーリーのような日本語タイトル。確かにそういう一面もあるが、今でも人種差別の残るアメリカという国で、虐げられ、貧困にあえぐ黒人の視点で作られた映画。監督は「ムーン・ライト」のバリー・ジェンキンス。個人的には、前作よりもこの映画の方が観易くてよかったが、インパクトは前作の方が上かな。

そもそも「ビールストリート(Beale Street)」からメンフィスの話かと思ったら、なんと舞台はニューヨーク。しかも、原作ではメンフィスではなく『ニューオーリンズの「ビールストリート」』と書かれているらしい。ということは通りの場所はどうでもよく、黒人によるブルースの発祥の地「ビールストリート」を黒人が持つパワーの象徴として使っていて、「can」ではなく「could」に理想には程遠い現実のもどかしさを込めたのだろうか?

映画の中では、黒人が白人のことをボロカスにいうところが何度かある。そして、ファニーを無実の罪で陥れる白人警官はこれ以上ないくらい醜悪に描かれている。が、黒人と白人の対立が強調されている面もあるが、ファニーを庇って警官を追い返す商店のおばちゃんや、真面目にファニーを弁護しようとする新米弁護士なども登場することで、人種間の対立という単純な話ではないことを見せる。

同様に、ティッシュの家族全員が彼女の妊娠を祝福するのに、ファニーの家族は父親を除いてちょっとおかしい人達であるという対比もおもしろい。黒人と一括りにできるような単純なものでもないという現実を見せられる。不当に収監されたファニーを救うためにティッシュの家族は奔走するが、その中で頑張るのがティッシュの母親(レジーナ・キング)。映画を見ていてその努力が報われるかと期待してしまうが、理不尽な現実を覆すことができないまま終わってしまう。

レジーナ・キングはこの演技で今年のアカデミー助演女優賞を獲得。決して派手な女優ではないので、初めてのアカデミー賞ノミネートで一発受賞したのは努力だけでなく運も強かったか? 7回ノミネートされて、また受賞できなかった人もいたしね。

予告編

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