今日の映画 – ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ(Genius)

コリン・ファースが辣腕の編集者マックスウェル・パーキンズ、ジュード・ロウが作家トーマス・ウルフ、ニコール・キッドマンがその妻という配役の1920~30年台のアメリカを舞台にした映画。

Genius

まず小説の編集者がどういうものなのかピンとこない。映画を見ていて分かってくるのは、編集者は出版社の「作家担当」ということ。ただし、この役職は日本とアメリカでは相当違うように思われる。

出版業界に詳しくないので想像だが、日本の編集者がやっているのは原稿の文法表現の間違い、公序良俗に反していないかのチェックなどはやっている程度ではないだろうか?

ところが、この映画でコリン・ファース演じる編集者マックスは、トーマス・ウルフの書く形容詞をてんこ盛りにした表現を、これも要らない、あれも要らないと大胆なカットを提案し、それを納得させてしまう。トーマス・ウルフとの小説作りでは面と向かって意見を述べ合うという様に描かれていたが、ヘミングウェイの原稿にはマックスが直接赤を入れていた。もちろん、最終決定はヘミングウェイによって行われたのだろうが、日本の編集者がここまで踏み込むものだろうかと思ってしまう。

トーマス・ウルフの小説を読んだことはないが、映画のシーンから想像すると詩的表現が好きでその才能もあるが、その程度が分からずにコテコテかつ長文にしてしまう傾向があったように思われる。それをマックスが売れる小説にするためにバサバサと切り詰めて行くという構図。作家を表に立てて自分は黒子であるが、共同で小説を仕上げていくという感じ。ヘミングウェイ、フィッツジェラルドも同様にマックスに見出されて成功しているというからアメリカでは小説の編集者という役割が100年前に既に確立していたということになる。

出演者では、ニコール・キッドマンが3番目にクレジットされているが、トーマス・ウルフとの屈曲した関係の難しい役で、途中から出てこなく鳴るので、コリン・ファースとジュード・ロウが殆どのシーンに出ている。2人とも達者なので全く違和感なく観たが、どちらもイギリス人。おまけにニコール・キッドマンはオーストラリア人。イギリスの俳優陣が強すぎるのか、それともアメリカの性格俳優が払底してしまっているのだろうか?

ジュード・ロウの役柄が奔放で常識はずれの芸術家なのに対して、コリン・ファースは冷静沈着な実務派なので、演技はジュード・ロウが目立ってしまうが、主演はどちらなのだろうか? 日本語のタイトルはサブタイトル付きで、コリン・ファース主演を示唆するが、英語の原題はシンプルに「Genius」とあるだけ。

この作家と編集者、いずれも「天才」といえると思うが、「Geniuses」ではないからどちらか一人。とすれば、日本語タイトルを付けた人と同様、Genius = 編集者Maxとするのが妥当な気がする。 「Genius」を辞書で調べると「守護霊」という意味もあるので、これはマックスが作家達の庇護者でもあったことに通じるように思う。

最後に、映画に出てくるフィッツジェラルドは、「ギャツビー」の売れ行きがはかばかしくなく、経済的に困っている状況で、トーマス・ウルフにぼろくそにこき下ろされる。しかし、「ギャツビー」の日本語訳は今でも販売されているのに、トーマス・ウルフの小説の日本語訳はいずれも廃刊となっている。


Trailer


2016年に観た映画

番号 邦題 原題 監督 評価
52 ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ Genius Michael Grandage 4.0
51 PK PK Rajkumar Hirani 4.5
50 われらが背きし者 Our Kind of Traitor Susanna White 3.5
49 手紙は憶えている Remember Atom Egoyan 4.0
48 インフェルノ Inferuno Ron Howard 3.0
47 スター・トレック BEYOND Star Trek Beyond Justin Lin 3.5
46 ジェイソン・ボーン Jason Bourne Paul Greengrass 3.5
45 ある天文学者の恋文 La Corrispondenza Giuseppe Tornatore 4.0
44 ハドソン川の奇跡 Sully Clint Eastwood 4.5
43 ソング・オブ・ラホール Song of Lahore Sharmeen Obaid-Chinoy 4.0
42 スーサイド・スクワッド Suicide Squad David Ayer 4.0
41 イングリッド・バーグマン 愛に生きた女優 Jag ar Ingrid Stig Bjorkman 4.0
40 ティエリー・トグルドーの憂鬱 La Loi du Marche Stephane Brize 3.5
39 イレブン・ミニッツ 11 Minut Jerzy Skolimowski 3.5
38 ニュースの真相 Truth James Vanderbilt 3.0
37 バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 Batman v Superman: Dawn of Justice Zack Snyder 3.5
36 ブルックリン Brooklyn John Crowley 2.5
35 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 Trumbo Jay Roach 4.0
34 AMY エイミー Amy Asif Kapadia 4.0
33 帰ってきたヒトラー Er ist wieder da David Wnendt 4.0
32 教授のおかしな妄想殺人 Irrational Man Woody Allen 4.5
31 レジェンド 狂気の美学 Legend Brian Helgeland 3.5
30 デッドプール Deadpool Tim Miller 4.5
29 マネーモンスター Money Monster Jodie Foster 4.0
28 サウスポー Southpow Antoine Fuqua 3.5
27 マイケル・ムーアの世界侵略のススメ Where to Invade Next Michael Moore 3.5
26 ヘイル、シーザー! Hail, Caesar! Joel Coen,
Ethan Coen
4.0
25 マジカル・ガール Magical Girl Carlos Vermut 4.5
24 レヴェナント:蘇えりし者 The Revenant Alejandro González Iñárritu 4.0
23 アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち The Eichmann Show Paul Andrew Williams 3.5
22 ボーダーライン Sicario Denis Villeneuve 4.0
21 ミケランジェロ・プロジェクト The Monuments Men George Clooney 2.5
20 Johnny Winter: Down & Dirty Johnny Winter: Down & Dirty Greg Olliver 3.5
19 スポットライト Spotlight Tom McCarthy 4.5
18 さざなみ 45 Years Andrew Haigh 4.5
17 ルーム Room Lenny Abrahamson 3.5
16 最高の花婿 Qu’est-ce qu’on a fait au Bon Dieu? Philippe de Chauveron 3.5
15 人生は小説よりも奇なり Love is Strange Ira Sachs 3.5
14 レッキング・クルー 〜伝説のミュージシャンたち〜 The Wrecking Crew Denny Tedesco 4.0
13 リリーのすべて The Danish Girl Tom Hooper 4.5
12 SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁 Sharlock: The Abominable Bride Douglas Mackinnon 2.5
11 ヘイトフル・エイト The Hateful Eight Quentin Tarantino 4.5
10 マネー・ショート 華麗なる大逆転 The Big Short Adam McKay 4.0
9 キャロル Carol Todd Haynes 4.5
8 サウルの息子 Saul fia Laszlo Nemes 3.5
7 ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります 5 Flights Up Richard Loncraine 3.0
6 独裁者と小さな孫 The President Mohsen Makhmalbaf 4.5
5 ブラック・スキャンダル Black Mass Scott Cooper 4.0
4 消えた声が、その名を呼ぶ The Cut Fatih Akin 4.0
3 完全なるチェックメイト Pawn Sacrifice Edward Zwick 4.0
2 ブリッジ・オブ・スパイ Bridge of Spies Steven Spielberg 4.5
1 スター・ウォーズ/フォースの覚醒 The Force Awakens J.J. Abrams aigh 4.8
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