今日の映画 – リヴァプール、最後の恋(Film Stars Don’t Die in Liverpool)

Film Stars Don't Die in Liverpool

映画レビュー

予備知識を持たずに映画館へ行って観て、けっこう無理なシチュエーションやなと思ったら実話に基づく映画やったというオチ。

主役のグロリア・グレアムは実在の人で、知らんかったけどアカデミー助演女優賞を取った実績のある女優。この人は4回結婚していてそのうちの一人は「理由なき反抗」や「北京の55日」を取った映画監督のニコラス・レイ。映画の舞台は、彼女が57歳で亡くなる最後の3年間くらい。この期間に彼女のボーイフレンドだったピーター・ターナーという20代後半の駆け出し俳優の回顧録が原作になっている。

映画の冒頭でアネット・ベニング演じるグロリアが舞台の開演前の楽屋で化粧をして、かつらを被って、口紅を引いて、発声練習をするシーンが映される。アネット・ベニングは60歳なので似通った歳だが、映画は化粧では隠しきれない皺をリアルに映し出す。舞台へ出る用意が出来てタバコというところでスタッフが「5分前です」と伝えにくるところを見せることで、グロリアがちゃんと時間を計って準備をするベテラン女優であることを知らしめる演出が上手。

ところがグロリアは突然倒れて、それがピーターへ知らされることで話は展開していく。映画はグロリアとピーターがリヴァプールで知り合って恋に落ちる「前期」、その後何らかの理由で別れた後に末期がんのグロリアとピーターが再会する数年後の「後期」が交錯する。この前後期の切替を、ピーターが扉を開くとその先で昔の回想シーンになるなど見せ方を工夫してある。

親子ほど年の離れた2人が恋愛関係になるというのがこの映画の肝だが、「前期」ではグロリアはソフトフォーカス、アップなしで撮られていて見た目はかなり若い。それに加えてグロリアが妙に可愛らしい声で喋るので歳を感じつつも、それなりに若くみえる。一方、「後期」は容赦ないアップの撮影でかつての大女優の衰えを見せつける。

アネット・ベニングはイギリスのアカデミー賞とゴールデン・グローブを受賞しているがアメリカのアカデミー賞を受賞しておらず「未だアカデミー賞を受賞していない名優」と言われている。最近では「キャプテン・マーベル」でマー・ベル博士の役を演っているが、60歳という実年齢よりも若く見える人。だが、この映画では容姿が衰えたかつての大女優という、ひとつ間違えば「痛い」役柄を見事に演じている。

相方のピーター役は、「リトル・ダンサー」でビリー・エリオットを演じたジェイミー・ベル。ピーターは駆け出しの俳優という役柄で、エリオットは頑張っているがアネット・ベニングの前ではまだまだというところ。それが返ってこの役柄に合っているので意外と良かった。ただ、死期を迎えたグロリアが息子に連れられてアメリカへ帰る際に、なんで一緒に行ってやらんかったのかというのはある。

映画の中でグロリアの乳がんの手術の跡が見えるが切開跡は最小限の小さなもの。毛が抜けてしまうと仕事が出来なくなるからという理由で抗がん剤治療を拒むシーンがあるが、女優を続けるためには乳房を大きく切除するのを避けたかったのだろう。それがために再発して死期を早めたことは気の毒ではあるが、ある意味現代の視聴者への啓蒙につながるのかも知れない。

予告編

2019年に観た映画

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