今日の映画 – ダンケルク(Dunkirk)

ダンケルクのポスター

映画レビュー

映画のタイトルとなっている「ダンケルク」はフランスの北部、ベルギー国境に近い海岸の町。50kmくらい西へ行くと、今は海底トンネルでつながっているドーバー海峡という位置関係。

この映画は戦争映画であるが、かなり異色。というのもダンケルクの戦いは、第二次世界大戦初期にドイツ軍がフランスへ侵攻した直後で、態勢の整わない英仏連合軍40万人がダンケルクで80万人のドイツ軍に囲まれてイギリスへ撤退するという負け戦。4年後の連合軍のノルマンディへの上陸作戦を扱った「史上最大の作戦」などと比べて、題材としては今ひとつ映えない。

さらに映画を通して、戦闘場面が殆どない。映画の冒頭ではダンケルクの市街戦がすこしあり、爆撃機からの爆弾投下、Uボートからの魚雷攻撃などドイツが一方的に攻撃するばかり。しかも、ドイツ軍の将校、兵隊は一切画面に出てこない。唯一、イギリスのスピットファイアとドイツのメッサーシュミットとの空中戦が戦闘場面と言えるが、ここでもドイツ軍として見えるのは飛行機だけで、人が見えてこない。つまり、映画全体が連合軍側、しかもドイツにやられっぱなしで生死も覚束ない兵士の視点で撮られている。

主人公の一人、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)は市街戦から命からがら抜け出してダンケルクの海岸に到着する、そこでフランス兵なのにイギリス兵になりすまして脱出しようとしているギブソン(アナイリン・バーナード)と出会う。この二人、戦争映画にありがちな、ガッツで敵に向かっていくなんてことはせず、姑息にも負傷者を担架で病院船に運ぶことで順番待ちの行列を飛ばして自分たちだけ逃げ出そうとする。ギブソンはフランス語をしゃべる訳にはいかないので寡黙であるが、トミーも無言で、二人は阿吽の呼吸でズルをする。このセリフなしで映像で見せるところがうまい。

映画はトミーを中心とした「陸」、イギリスの民間船船長で兵士の救出に参加するMr.ドーソン(マーク・ライランス)の「海」、イギリス空軍でスピットファイアのパイロット、ファリア(トム・ハーディ)が活躍する「空」の3つのパートが並行して進む構成。映画では各パートの最初の画面にキャプションが入り、陸は1週間、海は1日、空は数時間というような表示がある。最初、これの意味が分からなかったが、2時間という映画の時間枠に陸海空それぞれを収めるために、時間軸が違うということ。

これがちょっと分かりにくかった。例えば、「陸」の部分は何度も船で脱出しようとしては撃沈されて陸に戻るとか、1週間の間に起こったことが描かれる。一方、「空」は戦闘機の燃料がなくなるまでの時間しかない。「海」はイギリスから救出に行って戻ってくるまでの1日。これらが映画の最初から最後まで同時並行のように切り替わりながら進んでいくので気をつけて観ないと混乱する。例えば、スピットファイアが海上に不時着するシーンは2回出て来るが、それぞれ「空」から見たシーンと「海」から見たシーンで、実体はいずれもファリアの僚機の不時着で同じものというのがすぐに分からなかった。

監督のクリストファー・ノーランは銀塩フィルムで撮ることにこだわり、かつこの映画はIMAXで撮ったらしい。さらにブルースクリーンは使わず、とことん実写するためにスピットファイア3機も当時のものを飛ばしたという。35mmフィルムでの上映劇場で観たが、上下がカットされているらしいので、IMAXで上映される劇場で観るのがよかったかもしれない。

出演俳優では、監督お気に入りのトム・ハーディはスピットファイアのパイロット役でこの映画の軍人では唯一ヒーロー的な働きをする役。最後に燃料切れになってから滑空するところはこれでもかというくらい引き延ばして見せ場を作ってもらっている。もっとも出演時間の殆どはパイロット用のマスクを付けていて、顔が見えるのは30秒くらいしかない。

もう一人のお気に入りのキリアン・マーフィは、ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)に助けてもらう英国兵士の役。魚雷におびえてる役立たずで、ゲスト出演みたいな感じ。マーク・ライランスはブリッジ・オブ・スパイではソ連のスパイ役だったが、この映画ではキリッとした英国人で格好よし。

予告編

2017年に観た映画

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