今日の映画 – 告白小説、その結末(D’apres une histoire vraie)

D'apres une histoire vraie

映画レビュー

82歳のウッディ・アレンの映画を観た次の日にこの映画、監督は84歳のロマン・ポランスキー。多作のウッディ・アレンと比べると2~3年に1本ペースのポランスキーの方が作品数は少ないが、ふたりとも映画監督のキャリアの終盤にさしかかって、気に入った脚本を気に入った俳優を使って好きなように撮るというところでは似ている感じ。

しかし、2人の作品を続けてみるとそれぞれの個性が際立って面白い。アレンの脚本がセリフ過多ぎみでアメリカ映画らしく逐一説明的であるのにたいして、ポランスキーの脚本は観客に「足らん部分は自分で想像しといて」と突き放しているかのごとく説明不足なところは典型的なヨーロッパ映画。映像は二人とも綺麗な絵を撮るが、アレンが舞台を連想させるフラットでカチッとした感じなのに対して、ポランスキーの映像はコントラストの効いた深みのある感じ。

登場人物は何人かいるが、重要なのは2人。まず、売れっ子作家のデルフィーヌ、演じるのはポランスキーの奥さんでもあるエマニュエル・セニエ。彼女は母親の死を題材にした私小説風の作品がベストセラーとなったが、その次の作品をフィクションで企画しつつ、書き始められなくてスランプ中。

そのデルフィーヌのサイン会で接近してくるのがエヴァ・グリーンが演じるエル。彼女は自称ゴーストライターで、スランプで疲れ気味のデルフィーヌに巧妙に取り入って、やがて支配しようとする。その他の出演者は補足的な脇役にすぎない。

エマニュエル・セニエは、化粧してスッキリしているときと、すっぴんで疲れているときとの落差が痛々しいくらいリアルで、役になりきっているような好演。エヴァ・グリーンは逆に一分の隙もない見かけで、段々とサイコ的な本性を出してくるところがかなり怖い。

作家の熱狂的なファンが暴走するのはスティヴン・キングの「ミザリー」を連想させられる。エルを同居させると勝手にあれこれやり始めて、しまいにデルフィーヌに成り代わって講演に出るというところはブリジット・フォンダ主演の「ルームメイト」を思い出した。

エルは元々精神的に不安定で危ない人だったが、デルフィーヌの熱烈なファン。私小説風の前作の続編を期待しているのが、本人は自作をフィクションにしようとしているところでプッツン来てしまったというところか?デルフィーヌ自身も私小説を脱却してフィクションへ進もうと思いつつ、エルという「題材」が見つかると彼女の過去を聞き出して作品のネタにしようとするなど心が揺れ動く。

映画のタイトル「D’apres une histoire vraie」は英語タイトルでは「Based on a True Story」。この私小説かフィクションかというデルフィーヌの悩みをタイトルにしたところが洒落ている。

ガソリンスタンドで給油中に講演をすっぽかした学校の司書と偶然出会うというのは出来すぎているし、ラストの落ちも「おいおい」という感じがしないでもないが、ポランスキーはそういうリアクションを承知の上、細かなところには拘らず、余裕で自分の好きな映画を撮ったという感じがする。

予告編

2018年に観た映画

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