今日の映画 – さざなみ(45 Years)

シャーロット・ランプリングの59本目の出演作で、初めてアカデミー賞にノミネートされた映画。

45 Years

シャーロット・ランプリングは1975年の「愛の嵐」のイメージが強烈で、その後の「さらば愛しき女よ」なんかも良かったけど、振り返ってみれば演技派というタイプの女優ではないし、出演作に恵まれたとはいえない。しかし、出演作をみていくと20代から70歳に至るまでブランクの期間なしにコンスタントに映画に出ているところがすごい。今ではきれいなおばあちゃんになってはいるが、すらっとした体型を維持しているのはプロ意識のなせる技か? 残念なことにアカデミー助演女優賞は逃したが、この映画はシャーロット・ランプリングにとって、70歳にして初めて廻ってきた演技のできる映画で、このケイトの役がはまり役だったのではないかと思う。

映画の舞台はイギリスのどこかの田舎町。映画の冒頭でシャーロット・ランプリングが早朝の散歩からの帰り道でかつての教え子とあいさつと簡単な会話を交わすことで、退職した学校の先生で、結婚45周年のパーティを控えていることが分かる。家に持って入った郵便物の一つがドイツからの夫に宛てた郵便で、この手紙が元で平穏だった生活がおかしくなっていく。

夫役のトム・コートネイは、1962年のデビュー作「長距離ランナーの孤独」が代表作というくらいで成功した男優とは言えないが、最近では「リスボンに誘われて」でチョイ役のシャーロット・ランプリングと共演している。 ちなみに「長距離ランナーの孤独」を撮った監督のトニー・リチャードソンは低迷していたイギリス映画界で「怒れる若者たち」と呼ばれた若手世代の人やったけど、この時期にはフランソワ・トリュフォーやフェデリコ・フェリーニたちが精力的に仕事をしていたので、フランス、イタリアに比べてイギリスはかなり地味やった。なので、当時のイギリスの俳優は成功する環境に恵まれていなかったのかもしれない。

映画の中で、このトム・コートネイの夫は、女性から見るととんでもないというかあきれてしまうと思うけど、ドイツからの手紙で、結婚する前に一緒に山登りした際に氷河に落ちて亡くなったガールフレンドが50年ぶりに凍ったまま見つかったというのを知って気もそぞろになってしまう。45年連れ添った奥さんの気持ちを気遣うどころか逆撫でするようなことを連発する。

映画は、結婚45周年記念パーティ前の1周間を1日毎に描いていくが、初日の手紙に始まるシャーロット・ランプリングの心の揺れが夫の無神経な言動でだんだんと大きくなっていくのが見どころ。シャーロット・ランプリングの台詞は決して多くはないが、心情の変化を微妙な表情で表している。

脚本が良く出来ていて、45年間の結婚生活で夫婦の写真を残していなかったということが語られるが、夫は屋根裏部屋に昔のガールフレンドの写真を後生大事に残していたこと。また、その写真でガールフレンドが妊娠していたらしいのに対して、夫婦には子供が居ないらしいことが2人の女性の対比付けがシャーロット・ランプリングに与えるショックを生々しく見せる。

さらに映画音楽の使い方もよく考えられている。手紙が届いた翌日の朝、シャーロット・ランプリングは不安を感じながらも普段通りに振る舞って不安を否定しようとしている様に見える。散歩から帰ってきた時に、窓際に置いたラジオから流れる曲は、「I Only Want to Be with You」。3日目か4日目になって不安といらいらが増大して、友達と車で移動しているときに流れる曲は「To Sir with Love」。そして曲が「Young Girl」に代わった途端にラジオを消してしまう。

結婚45周年記念パーティでの曲は「Happy Together」、そしてダンスは「Smoke Gets in Your Eyes」。ダンスの最後で夫の手を振りほどき、悲しみに満ちた表情で映画は終わる。エンド・クレジットで流れる曲は、これもパーティ用に選曲されたThe Moody Bluesの曲「Go Now」。 この曲の歌詞はこんな風。

We’ve already said ‘Goodbye’.
Since you’ve got to go
Oh you had better go now.
Go now. Go now. Go now
Before you see me cry.
I don’t want you to tell me
Just what you intend to do now.
‘Cause how many times do I have to tell you
Darling, darling,
I’m still in love
With you now?


Trailer


2016年に観た映画

番号 邦題 原題 監督 評価
18 さざなみ 45 Years Andrew Haigh 4.5
17 ルーム Room Lenny Abrahamson 3.5
16 最高の花婿 Qu’est-ce qu’on a fait au Bon Dieu? Philippe de Chauveron 3.5
15 人生は小説よりも奇なり Love is Strange Ira Sachs 3.5
14 レッキング・クルー 〜伝説のミュージシャンたち〜 The Wrecking Crew Denny Tedesco 4.0
13 リリーのすべて The Danish Girl Tom Hooper 4.5
12 SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁 Sharlock: The Abominable Bride Douglas Mackinnon 2.5
11 ヘイトフル・エイト The Hateful Eight Quentin Tarantino 4.5
10 マネー・ショート 華麗なる大逆転 The Big Short Adam McKay 4.0
9 キャロル Carol Todd Haynes 4.5
8 サウルの息子 Saul fia Laszlo Nemes 3.5
7 ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります 5 Flights Up Richard Loncraine 3.0
6 独裁者と小さな孫 The President Mohsen Makhmalbaf 4.5
5 ブラック・スキャンダル Black Mass Scott Cooper 4.0
4 消えた声が、その名を呼ぶ The Cut Fatih Akin 4.0
3 完全なるチェックメイト Pawn Sacrifice Edward Zwick 4.0
2 ブリッジ・オブ・スパイ Bridge of Spies Steven Spielberg 4.5
1 スター・ウォーズ/フォースの覚醒 The Force Awakens J.J. Abrams 4.8
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