映画レビュー
ホイットニー・ヒューストンはそれほど思い入れのある歌手ではないが、観に行った。
映画の作りはドキュメンタリーの体裁。母親、叔母、いとこがプロの歌手という家に生まれ、教会でゴスペルを歌うところから始まって、母親の代理でステージで歌ってデビュー。生い立ちからスターへと駆け上がるところは普通に観てられる。
しかし、ボビー・ブラウンというどうしょうもない男と結婚するあたりから見るのが気の毒になってくる。エイミー・ワインハウスの伝記映画でもそうだったが、家族の誰かが成功するとそれにたかる寄生虫のような連中が全てを駄目にしてしまう。他人ではなく、父親や兄弟がホイットニーの稼いだ金を湯水のように使うだけでなく、精神的に不安定でドラッグに走るホイットニーの健康を気遣う気配もない。マネージャーを解雇された父親に至っては、ホイットニー相手に裁判を起こして巨額の金を要求する。この映画は伝記映画であるとともに、人間の弱さ、醜さを見せつける映画。
ホイットニーは生涯で2億ドル稼いだと言われているが、2012年に亡くなる直前では破産状態だったという。2億ドルの100分の1のお金でも、一族で普通に楽しく暮らすには十分だったのにとおもうけど、欲というのは恐ろしい。
ひとつ気になるのは映画のポスター。オリジナルのポスターでは正面から証明写真のように撮った飾り気のない写真を使っている。ここに、生のホイットニーの姿を見せるという映画製作者の意気込みのようなものを感じる。一方、日本のポスターは絶頂期の化粧で綺麗にした写真。こういうところに日本の配給会社の気合の無さ、あるいは売上至上主義を見た気になってしまうのは自分だけだろうか?
予告編
2019年に観た映画
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