映画レビュー
ナチスの幹部だったラインハルト・ハイドリヒの話。まず最初に違和感を持ったのは日本語のタイトル。ハイドリッヒが「ナチス第三の男」ということされていて、映画を観ると、ヒトラーに次ぐのがヒムラー、そしてハイドリッヒであるかのように思わせる。しかしナチスの幹部の序列となると、ゲッペルス、ボルマン、ヒムラー、時期によってはヘスの方がどうみても格上で、ハイドリッヒはせいぜい5番目か6番目じゃないかと思う。ちなみに原題の「鋼鉄の心を持つ男」はハイドリッヒの葬式でヒトラーが故人をたたえて使った言葉。3番目という意味はタイトルにも映画の中にもないので、日本の配給会社が勝手に付けたようでどうもしっくりこない。
映画の前半は、ハイドリッヒ(ジェイソン・クラーク)が女性関係の問題でドイツの正規軍を不名誉除隊になり、情報将校を探していたヒムラーにリクルートされてナチスに入党、そこから幹部へと駆け上がるまでが描かれる。最初の頃のハイドリッヒは優柔不断というか、いまいちシャキッとしていなくて、ナチスへの入党も先に党員になっていた婚約者リナ(ロザムンド・パイク)に背中を押されてのこと。しかし、その後は持ち前の冷徹さを発揮してキャリアアップしていく。この過程での性格の変化をジェイソン・クラークが好演。最初は毒々しくて強かったリナが最後には相対的に弱くなってしまったのはなんとなく残念。
映画の後半は、チェコの副総督となったハイドリッヒをを狙う暗殺隊の話。イギリスにあるチェコスロバキア亡命政府が送り込んだ亡命チェコ人と地元の地下組織が暗殺計画を立てて準備、実行するところは見ていて手に汗を握る。結局暗殺は成功するが映画はそれで終わらず、ナチスによる執拗な実行犯の捜索が行われ、隠れ家での銃撃戦と悲劇的な結末へと続く。
最後に地下に追い詰められた2人が水攻めされて、壁を破って下水道への脱出を試みるところでは、もしかしたら助かるのかもという期待をもたせておいて、残念でしたというのはどうかなと思うけど。
ナチスを題材とした映画は多く作られてきたが、大抵は戦争映画か抑圧された側からの視点で作られたもの。ナチスの特定の幹部に焦点を当てた映画という点では斬新。
予告編
2019年に観た映画
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