今日の映画 – 蜘蛛の巣を払う女(The Girl in the Spider’s Web)

The Girl in the Spider's Web

映画レビュー

小説を読んで映画化を期待していただけに、観てみてがっかりというのが本音。

まず、原作のパーツを使っているがストーリーが別の作品といって良いくらい改変されている。殺される博士が発明したのは小説では人工知能のアルゴリズムだったのが、映画では核兵器の発射システムになっているし、博士のサヴァン症候群の息子は小説では一言もしゃべらないが、リスベットがハッキングするためのキーとなる楕円方程式を解けずにいるのを見て間違っているところを修正する数学の天才として描かれているが、映画では自閉症でちょっと覚えにくいパスワードを覚えている程度に見えてしまう。

さらに、小説では名前が出るだけで姿を見せなかったリスベットの双子の妹カミラを登場されるだけでなく、ラストで死なせてしまっているのはどうしたものか。小説では、次作のミレニアム5でもカミラは登場しないのでミレニアム6で姉妹の対決が期待されるのに、ここで殺してどないすんねん。

映画の方がよくできていたのは、ラストで単身で敵地に潜入するリスベットを、おたくハッカーが建物の3Dのモデリングを作成し、それを使ってアメリカから来たCIAだかのおっさんが強力な火器で狙撃して支援するところ。この部分は小説にはないが、3人で大勢の敵に対する方法としての意外性、そして映画ならではの視覚に訴えるところが秀逸だと思う。

しかし、一番問題なのはリスベットのキャラクター。小説でも話が進むにつれ、格闘技を身につけたり、多少はファイトできるようになっては来ているが、小柄で華奢でジャンクフードしか食べないようなハッカーがリスベットの本来の姿。それを、無理やりファイターにしてしまっているところに大きな違和感を感じる。

また、小説版のリスベットは、常に慎重で相手の裏をかくのが情動で、映画のように敵に捕らえられてしまうというのはあり得ない。リスベット役のクレア・フォイはトラマ「ザ・クラウン」では良かったが、やっぱりイメージと違う。リスベットは良いときも、悪いときも感情を表情にださず、常に不機嫌な顔をしているキャラ。なので、この映画での妹と対峙するところで見せる不安そうな表情はありえない。クレア・フォイには悪いけど、ルーニー・マーラの方が良かったし、ノオミ・ラパスはもっと良かった。

この小説は、やっぱりハリウッドではなくスウェーデンで映画化して欲しかった。

予告編

2019年に観た映画

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