今日の映画 – ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー(Rebel in the Rye)

Rebel in the Rye

映画レビュー

アメリカは国の歴史が短いので、日本やヨーロッパでの古典文学に相当する文学がない。比較的古くて日本で定番となっている作家は、エドガー・アラン・ポー、マーク・トウェイン、アーネスト・ヘミングウェイ、ジョン・スタインベックなど。1919年生まれのJ・D・サリンジャーはもう少し後の世代で、名前と代表作「ライ麦畑でつかまえて」のタイトルは知っていたが、読んだことはなかった。

そのサリンジャーの半生を描いた映画ということで、予備知識を仕込むためにWikipediaの「ライ麦畑でつかまえて」を読んだ。が、この小説の主人公ホールデン・コールフィールドは、事あるごとに落ち込み、落ち込み、落ち込んでいくキャラ。従来の小説と違って、口語調の文体で書かれているのが特徴だが、読むのは辛そう。

それを踏まえて映画を観たが、第二次大戦を挟んだ時代の話で戦争から返ってきたサリンジャーがPTSDに悩まされたり決して明るい映画ではなかったが、観ていて落ち込むほど暗くもない。落ち着いた色調の映像が当時の世相を反映しているようで良かった。

主演のニコラス・ホルトはSFものへの出演が多かったが、シリアス・ドラマで好演。脇役のケビン・スペイシーが若いサリンジャーを指導し影響を与える立場から、凋落していくところもなかなか良かった。ケビン・スペイシーはスキャンダルで干されていて、この映画が最後の出演作になるのかも知れないが、演技力はやっぱり大したもの。

サリンジャーがどういう人だったのか全く知らなかったので、数冊の出版された小説と雑誌に寄稿した短編以外に作品が少ないということ、後年は外界との付き合いを断って著作に没頭したということを映画を観て初めて知った。でも、籠もって書いた作品はその後どうなったのだろうか?

あまり一般受けする映画ではないが、悪くない。

予告編

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