今日の映画 – JACO（Jaco）

ジャズ・ベーシストのジャコ・パストリアスの伝記映画。 ジャズの映画は先日「ブルーに生まれついて」を観たばかりだが「ブルーに生まれついて」が史実に基づいた創作だったのに比べて、こちらはよりドキュメンタリーに近い映画。

この映画を観るまで、ジャコのことをよう知らんかったけど、映像で演奏しているところを見ると素人目にも凄い。フレットを外して溝をパテで埋めた三味線みたいなベースギターを弾いていたというところで常人ではないが、映画の中の若い頃のJACOはナイーブな若者にしか見えず、家族と写っているホームビデオでは普通の良いお父さんという感じ。 実際、若い頃にはドラッグや酒に手を出さず、まっとうな生活を送っていたらしい。

映画では、ジャコが属していたバンド、ウェザー・リポートのウェイン・ショーターやピーター・アースキンがインタビューに登場して、ジャコがバンドに入る経緯やバンドでの活動について語られる。この頃がジャコの絶頂期やったと思われるが、徐々に精神的に不安定な兆候が見え隠れする。そもそも、リズムセクションのベースギターはバンドの裏方というのが一般的な見方と思うけど、全面に出てきて他のバンドメンバーと張り合うというのはクリームのジャック・ブルースくらいしか思いつかない。もっとも、ジャック・ブルースはヴォーカルもやるし、演奏で張り合っていたのはクラプトンよりもおなじリズムセクションのジンジャー・ベイカーらしいので、純粋にベースギターの演奏で主張していたというところではジャコの方が上か？

そして、最後はミュージシャン物お決まりの転落。晩年はドラッグだけでなく双極性障害を患って、入院、路上生活のあげく酔っ払って入ろうとしたナイトクラブのガードマンと喧嘩して命を落としてしまう。この絶頂とどん底との落差は、ジョニ・ミッチェルのインタビューで生々しい。出演しているインタビューは皆ジャコの才能を賛美しているのに、家族を含めて、誰もが路上生活まで落ちたジャコを助けようとしていなかった。ということは、最後は手のつけようがないほど酷かったということだろうか？

映画を見終わった後に残った疑問は、なぜジャコは最後までベースギターにこだわったのかという事。彼ほど才能があったら、普通の6弦のギターを弾いたらもっと凄かったんとちゃうかな。

Trailer

2016年に観た映画