今日の映画 - アルツハイマーと僕 グレン・キャンベル 音楽の奇跡(Glen Campbell: I’ll Be Me)

Glen Campbell: I'll Be Me

映画レビュー

この映画を観るまでグレン・キャンベルという人を知らんかったけど、アメリカでは誰もが名前を知っているくらいのスターやったらしい。

元々は映画「レッキング・クルー」などにも出てくるスタジオミュージシャンのギタリストでビーチボーイズのツアーやレコーディングにも参加していたという。レコーディングで支えたのは、ナット・キング・コール、モンキーズ、エルヴィス・プレスリー、フランク・シナトラなどの大物の名前が並ぶ。多くのスタジオミュージシャンがバックバンドの一人で終わったのに、グレン・キャンベルはソロ活動を始め、売れない時期を我慢して、カントリー歌手として成功したという経歴の人らしい。

映画はグレン・キャンベルのドキュメンタリーという体裁だが、普通の伝記映画と違うのが、2011年に75歳でアルツハイマーと診断された後の最後のツアーに張り付いて撮影した映像が大部分というところ。映画の冒頭からして、医師の診察を受けるところだが、家族の名前を思い出せないとか、相当症状が進んでいる。

ツアーでのライブを普通にこなしているように見えたが、ある場面で突然歌えなくなる。舞台に置いてあったプロンプターが故障して歌詞を表示しなかったので、忘れてしまった歌を歌えなかったという訳。不思議なのは、歌詞を忘れて自力では全く思い出せないのに、リズムやメロディはなぜか覚えていて、プロンプターの助けがあれば演奏して歌えること。

ある曲では途中に長いソロの演奏の部分があるが、「長いソロ」というプロンプターの表示だけで演奏してしまう。ギターの演奏に必要な記憶は歌詞とは別のところにあるのかもしれないが不思議。それとも体で覚えるくらい弾き込んでいるプロの技の為せるところなのだろうか?

ゲストというかインタビューを受ける面々も有名アーティストから知らないミュージシャンまで多種多様。ポール・マッカートニーはちょっと儀礼的な感じがしたが、多くの人が尊敬のコメントを残している。また、そのうち半分くらいの人が、アルツハイマーなど老人性の認知症を患った人が自分の身内にいたことを告白していた。何人かの人が「勇気がある」とコメントしていたのも興味深い。ツアーで失態を演じてしまうと今まで築き上げた名声を台無しにしてしまうかもしれないという心配からの発言らしい。

気の重い話だが、避けては通れない問題。それにしても、この邦題、ちょっとストレートすぎるのんちゃうかな。

予告編

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