映画レビュー
アメリカの南北戦争とその後の時代にミシシッピー州で北軍にも南軍にも属しない「ジョーンズ自由州」を立ち上げた実在の人物ニュートン・ナイトの物語。映画を観終わった感想は、「ちょっと疲れた」。題材は悪くないし出演者もそれなりの俳優を集めているのに「う~ん」という感じ。140分という長さもあるが、それ以上に映画のまとまりの無さに疲れてしまった。
映画は前半と後半でかなり色合いが違う。前半は、南軍の脱走兵の主人公ナイト(マシュー・マコノヒー)が脱走兵仲間や黒人奴隷、重税にあえぐ農民たちを一つにまとめ、反乱軍として3つの郡を支配下において残忍な南軍の将校に復讐するまで。後半は南北戦争が終わって、ナイトやその仲間たちが別の地へ移り住んで暮らしていく話。そして映画全体に渡って、時代が下ってからナイトの子孫が異人種間の結婚を禁止する法律違反で裁判に掛けられるという話が挿入される。
前半は、南軍が同じ白人の小作農家に重税を課して略奪まがいのことまでする悪辣ぶりが延々かつ淡々と描かれる、これはナイトが奮起する背景ではあるが冗長すぎるしたいした盛り上がりもない。ここをもっと手際よく切り詰めて、「独立州」を作るまでの内容を膨らませれば、この映画の前半だけでもっと面白いものが作れたのではないかと思う。
そういう意味では後半は不要。南軍との抗争中には生き生きとしていたナイトは精彩を欠いて北軍が引き上げていった後のKKKの横暴に為す術もない。敢えて好意的にに見れば、解放奴隷でありナイトの盟友であるモーゼス(マハーシャラ・アリ)の自由市民としての主張と挑戦と挫折を描くことで人種問題が簡単には解決できない問題であることを改めて見せようとしたのかもしれない。しかし、それであれば、映画を通しての人種問題への堀込みが浅い。
人種問題に関して興味深いのは、150年近く前の奴隷制度が廃止される前の南部で、反乱軍の中で白人と黒人が共に戦ったということ。映画では、搾取する側の裕福な白人と搾取される側の貧乏白人と黒人奴隷という対立構成だけで説明してしまっているが、そんな単純な話かなと疑問に思ってしまう。
結果的に、史実に基づいた映画というには本当らしさに欠けるし、娯楽作品というには楽しめない中途半端な映画になってしまっている。
主演のマシュー・マコノヒーは「ダラス・バイヤーズ・クラブ」の成功でトップスターに名を連ねたかと思ったが、その後いまひとつ輝きがない。この映画でも悪くはないが、映画の造りのせいもあって単調になってしまったきらいがある。
モーゼス役のマハーシャラ・アリは、登場場面は多くないが、生き生きとして存在感あり。先日発表のアカデミー賞では、「ムーンライト」で助演男優賞を獲得しているので今後が楽しみ。
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