映画レビュー
実在のギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの映画。ジャンゴはロマの旅芸人の家に生まれ、ロマ音楽とジャズを融合させたジプシー・スウィングの創始者として多くのミュージシャンに影響を与えた人。映画の舞台はナチスドイツ占領下のフランスとその開放直後の数年間。なので、ジャンゴの伝記映画というよりも、既にスターになっていたパリで占領下でも演奏を続けていたものの、ナチスのロマ迫害がひどくなってスイスへ逃げ出すまでの一時期を描いたもの。
ロマという民族は起源はインド北部らしいが定住せずに旅するいわゆるジプシーとして生活していたので行く先々でいじめられていたらしい。ナチスがユダヤ人を迫害、虐殺したことは度々語られてきたが、ロマの人たちもユダヤ人と同じように強制収容所に送られて虐殺されていて、これは映画の中でも示唆されている。ロマの苦難が一般に知られていないのはユダヤ人ほどに発言力と財力がなかったからとしか思えない。
迫害する側のナチスはジャンゴを利用しようとするが、演奏させるにも、「ブルースは禁止」、「シンコペーションは5%以下」、「ソロは5秒以内」などの注文を付けるところはなんとなくドイツ人っぽい。また、ジャンゴを身体検査して頭蓋骨などを計測するところは民族を分別して大量虐殺へ走らせた思想を垣間見るようで不気味。
映画の中での演奏部分はジャンゴの音楽の流れを汲むというオランダのジプシー・スイングのバンド、ローゼンバーグ・トリオが参加している。肝心のジャンゴのパートは主演のレダ・カテブが1年間ギターを練習して自分で演奏しているという。
映画のラストではジャンゴが作曲し、一度だけ演奏され、楽譜が一部しか残っていないレクイエムを指揮するが、欲を言えばもう一回ギターをやって欲しかったところ。
予告編
2017年に観た映画
2017年版「今日の映画」のリストはこちら。