映画レビュー
LGBTQの息子とその両親の物語かと思って映画館へ行った。確かに家族の映画でもあるが、それ以上にLGBTQを矯正しようとする施設とそれを是とするアメリカの暗部を描いた映画だった。
世界で同性婚を認めている国とそうでない国とに分類すると、アメリカやヨーロッパの多くの国は前者で日本は後者。これをもって日本は遅れているうんぬんの議論もあるが、どうだろうか? 日本で同性婚に強硬に反対する人は、憲法の結婚の定義に合わないとか理屈をこねるけど、自分が日本の伝統・慣習だと思い込んでいるものと違ったことを「公式に」認めたくないだけのように見える。要は、「表に出んとこで何やってもええけど、『結婚』という形式を求めたらあかんで」というニュアンスがあるように思える。これはこれで問題ではあるが、そもそもLGBTQに反対する大した根拠がないところからくる最低限の寛容があるような気がする。
一方、キリスト教という宗教によって同性愛を否定されてしまうとLGBTQ当事者にとっては悲惨。この映画は宗教の不気味な一面と、それを感じずに信じている人たち、それを逆手に取って金儲けに勤しんでいる人たちを見せる。アメリカの一部の州では同性婚が既に認められているのに対して、まだ34の州では映画で描かれた矯正施設が残っているというから変な国やなと思う、アメリカは。
出演俳優では主演のルーカス・ヘッジズに注目が集まるが、監督で矯正施設のセラピスト役でも出演しているジョエル・エドガートンが意外と良かった。施設に入れられた少年、少女を前に向けての「1ドル紙幣」の話は妙に説得力があった。ニコール・キッドマンの母親役は最初はどうかなと思ったけど、観終わってみるとよかった。ラッセル・クロウは可もなく不可もなくというところ。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーがちょい役で出ていて、その他の施設の少年たちも個性的で良かった。
予告編
2019年に観た映画
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