今日の映画 – 美女と野獣(Beauty and the Beast)

Beauty and the Beast のポスター

映画レビュー

1991年のディスニーのミュージカルアニメ「美女と野獣」の実写化。オリジナルの物語は18世紀にフランスで出版されていて、その後、映画、バレエ、ミュージカル、歌舞伎にまでなっている。有名なのは1946年のジャン・コクトーによる映画化で、ストーリーは原作に近い。しかし、世界的に有名になったのは1991年版のディスニーアニメで、1994年にブロードウェイで初演されたミュージカル、そして今回の実写版の映画も大筋は1991年版アニメを踏襲している。

実写化できたのはCGの技術の革新のおかげであることは言うまでもない。ミュージカルは見ていないが、舞台にティーカップ役を出すのはしんどそう。映画では実写できないところ当然CGで造られているが、主人公たちの村や城の内部などはセットを組んで撮影したそうなので、不自然なCGっぽさがない。逆に村人大勢で歌う場面などはミュージカルと同じ楽曲を使っているので古き良きブロードウェイミュージカルの雰囲気を強く残している。舞台の制約から逃れて、かつ実写とCGの映像の良い所取りをして上手に作ってあると思った。

あと、ミュージカルへのオマージュとしては、城の中でルミエール達がベルを歓迎する「Be Our Guest」でポットの周りに塵払いが万華鏡のように回るシーンはエスター・ウィリアムズ主演の水中レビュー映画を連想させ、水たまりの中でルミエールが踊るシーンは「雨に唄えば」のジーン・ケリーそのもの。

メインの配役は、ベル(エマ・ワトソン)、ビースト(ダン・スティーブンス)、ルミエール(ユアン・マクレガー)、ガストン(ルーク・エヴァンス)の4人であるが、4人共イギリス人。かつ全員が吹き替えなしで歌っている。イギリスの俳優陣の層の厚さを改めて感じる。

エマ・ワトソンは、この映画への出演を決めた後に打診を受けた「ラ・ラ・ランド」への出演を断って、後釜で役を獲得したエマ・ストーンがアカデミー主演女優賞を獲得したので賞を撮り損ねたように言われているが、ミュージカル映画としての出来栄えは「ラ・ラ・ランド」よりも「美女と野獣」の方が数段良いと思う。エマ・ワトソンは美人というより知性的なタイプでこの配役は良い。ハーマイオニーのイメージから大人になって今後が楽しみな女優。

ダン・スティーブンスは映画への出演は多くないが、テレビドラマ「ダウントン・アビー」のマシュー役でブレイクした俳優。ビースト役なので映画の最初と最後しか素顔を晒さないが、ベルが去った後で独り切々と歌う「Evermore」が泣かせる。歌唱力も大したもの。

ユアン・マクレガーは素顔での登場は僅かだが、軽妙な話術と「Be Our Guest」などでの歌いっぷりで見かけによらず芸達者なところを見せつける。

ルーク・エヴァンスは脇役での出演が多いが、「ホビット 決戦のゆくえ」で弓の達人の役をやっていた俳優。この映画では唯一の憎まれ役をきっちりとこなしている。元々ミュージカル出身なので歌も踊りも上手。

脇役も「ロード・オブ・ザ・リング」でのガンダルフのイアン・マッケラン、エマ・トンプソンなど隙のない配役。主題歌の「Beauty and the Beast」は主人公のダンスのシーンとフィナーレと2回歌われるが、前者はエマ・トンプソンのソロ、後者はオードラ・マクドナルドがリードで聞かせる。お城の家来に黒人が入っているのも今の映画らしい。

1点気になったのは、ガストンの部下の3人組が城に攻め入った時に女装させられて変になるのは良いとしても、フィナーレでル・フウと男同士でダンスさせるところ。これはLGBTの権利肯定とは言い難く、ちょっと失礼なのではと思った。それを除けば良い映画で楽しめる。

予告編

2017年に観た映画

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