今日の映画 - メッセージ(Arrival)

「メッセージ」のポスター

映画レビュー

「未知との遭遇」などと同じ地球外生物とのファースト・コンタクト物のSF。映画を観終わった感想は、けっこう複雑というか微妙。

まず、ディテールが丁寧に作られているところと説明を大胆に省略しているところとのバランスがどうもしっくりこない。宇宙船らしきものの中に入っていくと重力の向きが変わるところとか、タコみたいな宇宙人とその墨絵みたいな言葉とかけっこう緻密に作ってある。一方で、宇宙人が地球にやってきた目的とか、なんで同時に複数箇所にやってくるのかなどの疑問に対する明確な答えはない。

もっとも、逐一答えを用意する必要なんかないし、観客に考えさせるというのもあり。また、この映画の中で重要なポイントは「時間」で、それは映画のメインの「時間」と所々に挿入される主人公ルイーズの娘の「時間」とが一致しないという見る側にとっての謎、疑問が映画の最後になって、「なるほど」と思わせるところが肝。それはルイーズが宇宙人とコミュニケーションを取ることによって得たと思われる「能力」によるはずやねんけど、なんでそういう「能力」が身についたのかという説明くらいはあっても良いのではと思う。

そして、その「能力」によって、映画の終盤で世界がバラバラになる危機に瀕した時に、ルイーズが中国の将軍に直接電話して、将軍しか知らないはずの亡くなった奥さんの最後の一言を中国語で言う。これで将軍の気が変わって危機を回避というのは少々お手軽やないかな。国のトップの人間が、こういう個人的なことでふらふらするのはあかんやろ。2時間の枠に収めるために、メリハリを付けてカットすべきところはカットするのを良しとしても、メインでない部分が拙い印象を持ってしまう。

原作は中国系アメリカ人、テッド・チャンの「あなたの人生の物語 (Stories of Your Life and Others)」というSF。原作の小説を読んではいないが、Wikipediaなどによるとタコみたいな宇宙人の言語は「フェルマーの原理(光は目的地に到達する時間が最小になる経路を通る → まだ目的地に到達する前からその経路が最短と分かっている → 未来が分かる)」という理屈になっている模様。なので、ルイーズが宇宙人の言語を習得する過程で、時間の概念が変わってきて、その結果「能力」を手に入れるということらしいが、そこまで想像するのは無理やで、普通は。

原作のタイトルからすると、個人的な物語だったものを、映画では「Arrival」の名の通り、異星人とのコンタクトをメインに据え直したのかなと想像。それは監督の裁量で、扱いにくい題材を「料理」した監督のドゥニ・ビルヌーブに敬意を表す(併せて、「ブレードランナー」の続編にも期待!)。が、その邦題が「メッセージ」というのはどうしたもんか。

俳優陣はポスターに写真が載っている、 エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカーの3人がメインではあるが、実質エイミー・アダムス独りの映画みたいなもん。この女優、「ダウト〜あるカトリック学校で〜」、「ザ・ファイター」、「ザ・マスター」、「アメリカン・ハッスル」とコンスタントに高い評価を得ているのに、助演女優のイメージでいまいち印象に残らない。実力はあるので、そろそろブレイクしそうな気がする。

あと、黒い宇宙船の形が、日本のお菓子「ばかうけ」の形にインスパイヤーされたと監督が言っているのが話題になっているが、どうやら後付けの日本向けのサービス・トークだったらしい。

さらにおまけ。日本語ポスターや予告編のタイトル「メッセージ」の「セ」だけフォントが違う。英語のタイトルではそういう「小技」は使っていないので日本での配給の際に遊んでみたのかもしれないが意図不明。

予告編

2017年に観た映画

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