映画レビュー
4人の大学生がオーデュボンという人が描いた「アメリカの鳥類」という高価な画集を盗み出そうとする犯罪映画。結局盗みの計画は失敗に終わり、4人は有罪となって7年間服役することになる。映画は俳優が演じる事の顛末と、その折々に挿入される本人たちのインタビューが絡まり合いながら進む変わった構成になっている。
「アメリカの鳥類」を盗むことを思いつくのはスペンサー(バリー・コーガン
)、そのアイデアを聞いて実行までの推進役になるのがウォーレン(エバン・ピーターズ
)。あとの2人チャールズとエリックは誘われて参加したので主犯とは言い難い。
主に計画を立てたウォーレンは家庭に問題もあり一番犯罪に走りそうなタイプだが、緻密に計画を作るタイプではなさそう。案の定、実行すると予想外のことが次々と起こる穴だらけのプラン。観ていて不思議に思ったのは、ウォーレンよりも知恵が回りそうで、失敗したときにウォーレンよりも失うものが多そうな他の3人が、計画をしっかりと吟味していないところ。
変装を直前になってやめたり、逃走経路の確認が不十分だったり、本の重さを考えていなかったりとプランはボロボロだが、盗んだ本を換金する手段をウォーレンに任せ放し。最後にスペンサーが示唆したように、ウォーレンは換金の目処がないのにあるフリをして他の3人を引き込んだようにも見える。
だが、この映画は素人犯罪者の計画の優劣を語るのではなく、なぜ4人の大学生が犯罪に走ってしまったのかというところがポイントかと思う。実行直前になって抜けようとするスペンサーをウォーレンが説得するシーンがある。退屈な大学生活を送って平凡な人間になってしまうのではなく、自分が「特別な」人間であることを証明するために「何か」をしなければならないと考えるのは、この年頃の世代には共感しないまでも理解できるのではないだろうか?
その「何か」によってはアメリカン・グラフィティになっていたかもしれないのに、「犯罪」を選んだがためにアメリカン・アニマルズになってしまったという映画かなと思う。
スペンサー以外の3人は本人と似たタイプの役者が選ばれているのに対し、スペンサー役のバリー・コーガンは本人と全く似ていない。コーガンは「聖なる鹿殺し」の不気味なイメージが強くて微妙な違和感を感じた。悪くはないねんけど・・・
予告編
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