映画レビュー
制作はチリ・アメリカ・ドイツ・スペイン合作となっているが、監督、俳優、舞台もチリなので実質チリ映画。映画館に行ったのはアカデミー賞が決まる前だったが、2018年の外国語映画賞を獲得した。
主演のダニエラ・ベガがトランスジェンダー女優で、トランスジェンダーのマリーナの役を演じたということで話題になったが、ある意味先進的な映画がアメリカでもヨーロッパでもなく、カトリックの国チリで撮られたのは興味深い。
マリーナと相当年上の恋人オルランド(フランシスコ・レジェス)との関係はオルランドの死で終わってしまう。その前に、オルランドが航空券をどこにしまったのか思い出せないとか、2人のダンスシーンでオルランドが体格の良いマリーナに支えられているように見せるとか、観客に不吉な予感を与えた上で、やっぱり、と持ってくるところはよく考えられている。
その後は、お決まりのパターンで、オルランドの別れた妻、できの悪い息子、権力をふりかざす警官などの憎まれ役が意地悪する構図。皆、しっかりと憎々しく演技している。アメリカ映画だと、彼らがギャフンと言わされる結末を期待するが、ここではマリーナが自立して力強く生きていくことを暗示して終わる。
人種や性別による社会的な弱者への差別や理不尽ないじめは昔から映画の題材として使われてきたが、その延長線上にあると考えれば目新しさはない。逆に、奇をてらわない構成と綺麗な映像がこの映画の持ち味で、それがアカデミー賞受賞に繋がったと思う。
オルランドが遺した鍵が何度も出てきて、最後にそれが会員制スパのロッカーの鍵であることが判明して、何が出るのか期待させておいてそれはないやろと一言い言いたい。
予告編
2018年に観た映画
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