富士フィルムのコンパクトデジタルカメラ「XF10」を購入して約2ヶ月使ってみたので使用感などをメモしておく。
購入の背景
Nikonのデジタル一眼レフを使ってきたが、普段持ち歩くには大きすぎる、旅行には持っていくが嵩張って重い。かといってスマホのカメラまでグレードを落としたくないということで、新しいカメラを物色した。求める条件は、
- 持ち歩くのに苦にならない、ポケットに収まる程度のサイズ
- レンズ交換は不要 → ミラーレス一眼は除外、コンデジでよい
- それなりの画質 → APS-Cセンサー搭載
- レンズは35mm換算で28mmの画角、ズームは不要
- 動画は撮れるに越したことはないが、必須ではない
- 内蔵フラッシュ → 不要
- 価格は安い方がよい(そのためにはある程度は妥協する)
候補機種とスペック比較
上記の条件に合うコンパクトデジカメとなるとそう多くはなく、絞り込むと「リコーのGR III」か「富士フィルムのXF10」になってくる。リコーの旧モデルGR IIもまだ販売されていて価格がこなれてきているが、内部へ侵入したほこりのセンサーへの付着が弱点として指摘されているので除外した。
気になるスペックを取り出して比較したのが次の表。
RICOH GR III | FUJIFILM XF10 | |
サイズ | 109.4 x 61.9 x 33.2mm | 112.5 x 64.4 x 41.0mm |
重量 | 257g | 278.9g |
センサーサイズ | APS-C | APS-C |
画素数 | 2424万画素 | 2424万画素 |
レンズバリア | あり | なし(レンズキャップ) |
手ぶれ防止 | あり | なし |
内蔵フラッシュ | なし | あり |
価格(2019年7月) | 約98,000円 | 約45,000円 |
サイズ、重量、センサーに関してはほぼ互角。手ぶれ防止はできれば欲しいが、この価格差を考えれば諦められる。気持ちはXF10に傾いてきたが、購入を決めるにあたっての一番の障害はレンズキャップを付けたり外したりすることが受け入れられないこと。
レンズの前にフィルター用のネジが切られていないのでフィルターでレンズを保護することにしてキャップを使わないという手も使えない。諦めかけていたところで見つけたのが、他社製のフィルター取付け用のアダプターをXF10に取り付ける情報。よっしゃこれで行こうとXF10に決定。いくつか妥協したものの、半額以下という価格差は大きい。
購入したもの
カメラ本体
「FUJIFILM XF10」。色はブラックとシャンパンゴールドがあるが、好みはブラック。レンズキャップを付けるとこんな感じ。これを毎回付けたり外したりはないよね。
カメラケース(縦型、小さすぎて使用せず)
XF10には純正のケースがないので「HAKUBAの ピクスギア タフ03 M」を買う。サイズが厳しいかなと思ったが、XF10本体そのままなら収容可能。だが、フィルターを取り付ける工作をすることで厚みが増し、入らなくなったので結局使わなかった。縦型でポーチのように使えるケースが欲しかったので残念。
フィルターアダプター
XF10には直接フィルターを取り付けられないが何種類かフィルターを取り付けるためのサードパーティのアダプターが販売されている。要はメスのネジを切った枠を粘着テープあるいは磁石でカメラに取り付け、そこにフィルターをねじ込む仕組み。
したがってアダプターとフィルターの厚み分レンズが出っ張ることになるがそれも致し方なし。これでレンズキャップを使わずに済むなら受け入れられる。
購入したのは価格が手頃だった「SONYのVFA-49R1」これはベースのリングを両面テープでカメラに取り付け、そこにアダプターをバネで固定するタイプ。SONYがFUJIFILM用のオプションを出している訳ではなく、たまたまサイズが一致しているだけなので保証やサポートは期待できない。実際、後述のように多少問題があり解決できていない。
これを使えば、49mmのフィルターを装着できる。箱の中に含まれているのは次の写真にあるとおり。分かりにくいが、カメラに取り付けるのは手前の2つ。薄い方を両面テープで貼り付け、そこに厚い方をはめ込む仕組み。両面テープで貼り付ける際に中心がずれないようにするためのガイド(左)と、貼り付けたリングを外すための工具。
フィルター
レンズキャップ代わりの保護用なので、安いものを適当に選んだ。枠の色が選べたのでブルーにしてみる。
フィルターアダプターとフィルターを取り付けると冒頭の写真のようになる。
予備バッテリーと充電器
XF10にはバッテリー(NP-95)が1個付属するだけで外部充電器も付いていない。充電はUSBケーブルをカメラにつないで中のバッテリーを充電するしかない。
しかし、このバッテリー1個では例えば旅先で朝から使い続けると1日保たない。予備のバッテリーが必須だが、バッテリーを用意してもそれを充電するのにカメラが必要なら充電が追いつかない。
純正のバッテリーは高いので互換製品と充電器を探したところ、「互換バッテリー2個と充電器のセット」があったので購入。純正のバッテリーもこの充電器で充電可能。作りはおもちゃっぽいが、プラグ部分が折り畳めてコンパクト。今のところ問題なく使えている。
カメラケース(横型)
購入したけれども使えなかったのに懲りず、一つ大きなサイズのケース「HAKUBAのピクスギア タフ03 L 」を買う。
これならなんとかフィルターを取り付けた状態で収納できる。これをバッグの中に入れてもよいし、背面にベルト用ループがあるので、嵩張ることを気にしなければベルト、あるいはショルダーバッグの肩紐に取り付ければ撮りたいときにすぐ取り出せる。
メモリーカード
手持ちの古いSDカードを使ってみたが、画素数が増えた分ファイルサイズが大きくなって撮影後のデータ書き込みの時間が気になる。特にJPEGとRAWデータを両方保存するにはちょっと気になるくらい時間が掛かる。カメラ側のバッファとなるメモリが一眼レフと比べて少ないからと思われる。快適に使うために高速で大容量のSDカードを新調する。
メモリーカードは不具合が起こると全てのデータを失いかねないので多少高くても有名ブランドのものを使う主義。読み書きのスピードと価格のバランスを考慮して、「SanDisk Extreme PRO 128GB」を購入。形状は、将来にカメラ以外に転用するかもしれないのでマイクロSD+アダプターにしておく。128GBあれば、3:2の最高画質で10,600枚撮れる。これなら1~2週間の旅行なら1枚でまず使い切れない。
作例
基本的に開放の絞り優先、ISOをオートにして暗いところではある程度のシャッター速度を確保する。オートフォーカスはシングルAF、フィルムシミュレーションはVelvia。基本的にカメラ任せ。
台南駅 - f/3.2, 1/680, ISO200
天気が曇りだったのでコントラスト低めだが返って鄙びた感じが出ている。絞りは開放でも風景なら手前から遠方までフォーカスは合っている。
東屋 – f/3.2, 1/105, ISO200
ベタな部分がなく、枝や葉など細かな部分から成る構図。手前から奥までフォーカスが合っている。
高雄のMRT美麗島駅 – f/3.2, 1/28, ISO250
これ以上後ろへ引けない場所だったので全体を画面に収めるには24mmくらいの画角が欲しかったところ。でも十分広がりは感じられる。
台南、神農街の夜景 – f/3.2, 1/28, ISO640
しっかり構えれば手持ちでもぶれないシャッター速度。さすがに暗所は黒く潰れているが、提灯のハイライトは白飛びせずに撮れている。ISO640ならノイズも大丈夫。
花 – f/3.2, 1/1900, ISO200
道端の木に咲いていた花に多少寄って撮影。背景のボケ具合がいい感じ。
花 – f/3.2, 1/1400, ISO200
同じ花にAFが効くぎりぎりまで寄って撮る。XF10にはマクロモードが存在せず、設定を切り替えずにここまで寄れるのが良い。AFはゾーンにしていたが、思わぬところにフォーカスしてしまうこともあるのでシングルポイントの方が良いかもしれない。
問題点
XF10は電源を投入すると、レンズの鏡筒が最長で約5mm程度繰り出される。レンズキャップを付けたまま、あるいは窮屈なバッグに入れたまま電源を入れるとレンズが繰り出されず、写真のような表示が出てエラーとなる。このエラーはレンズを手で押さえつけたまま電源を入れても起こる。レンズを所定の位置まで動かそうとして出来なかった場合にエラーになるようだ。
困ったことに、XF10にフィルターアダプターとフィルターを取り付けると、電源投入時にかなりの確率でこのエラーが起こってしまうこと。電源をいったんオフにして再度オンにすれば解消するが、いざ撮影というときにこのエラーが出るのはストレスになる。具体的な現象は次の通り。
- フィルターアダプターを取り外せばエラーは起こらない → フィルターアダプターが原因
- 取り付けたフィルターアダプターはどこにも接触してないように見える。
- しばらく電源をオフにしていた状態からオンにすると高確率でエラーが起こる(起こらないこともある)
- 2回目以降の電源投入時のエラー発生率は低い。たとえば、バッテリー節約のためにこまめに電源を入り切りしても、ほとんどエラーは起こらない(起こることもある、特にオフ時間が長い場合)
- 起動時間を短縮するために「ハイパフォーマンス」をオンにするとほぼ確実にエラーが発生する
以上から推測すると、このエラーは、
- フィルターアダプターが何かに接触してエラーになっている訳ではなさそう。
- 可動部分にフィルターアダプターとフィルターを取り付けたことによる重量の増加が余分な負荷となってエラーを起こしていると思われる。
- レンズの駆動がモータによるものかどうか分からないが、おそらく消費電力を最小にするために可動部分を軽くし、駆動力を必要最小限に抑えている様子。
- 2回目以降の起動ではエラーが起きないのは、コールドスタートよりもホットスタートの方が必要電力が少ないからと考えられる。
現実的な解決策は「エラーが出たら、再起動する」ことしかない。フィルターアダプターやフィルターをさらに軽いものに交換することで改善できる可能性はあると思うが、やってみなければ分からない。
設定・カスタマイズ
今のところ以下のような設定で使っている。
- ISO感度:AUTO(基準:200、上限:800、低速シャッター:AUTO)
- 画像サイズ:L3:2
- 画像モード:F
- ダイナミックレンジ:AUTO
- フィルムシュミレーション:Velvia
- ホワイトバランス:AUTO
- カラー:標準
- シャープネス:スタンダード
- コントロールリング設定:デジタルテレコン
- タッチパネルモード:OFF
- 測光:マルチ
- 測光&フォーカスエリア連動:ON
- フラッシュ/フラッシュモード:発光禁止
- 操作ボタン設定/ファンクション設定/Fn1:RAW
- 操作ボタン設定/ファンクション設定/Fn2:スナップショット
- 操作ボタン設定/ファンクション設定/T-Fn1:使用せず
- 操作ボタン設定/ファンクション設定/T-Fn2:使用せず
- 操作ボタン設定/ファンクション設定/T-Fn3:使用せず
- 操作ボタン設定/ファンクション設定/T-Fn4:使用せず
- タッチパネル設定:OFF
使ってみて意外と便利だったのはデジタルテレコン。これをコントロールリングにセットした。そうすると、画像モードを「Fine + RAW」に設定できなくなる。仕方なく、常時は「Fine」で保存し、「RAW」でも保存したいときには「Fn1」を押してから撮影するようにしている。
タッチパネルのファンクション(T-Fn1~4)は使い勝手が良くないので使っていない。さらにタッチパネルの便利さよりも、知らないうちに触ってしまって設定や測光エリアが変わってしまう方がいやなのでタッチパネル設定自体をOFFにした。そうするとフィルムシミュレーションへタッチパネルからアクセスできなくなるので、Qメニューの操作しやすい位置にフィルムシミュレーションを移しておく。
まとめ
レンズキャップを使わないようにするために、非純正品のフィルターアダプターを使うことになるまでは良しとしても、その結果起動時にエラーが多発するようになったのが受け入れ難いところ。確認していないが、もしかしたら、この欠点は個体差があるかもしれない。XF10のコストダウンのために、フィルター用のネジが切られていないと思われるが、残念なところ。
一方、このようなコストダウンを重ねた結果、光学系ではライバルのGR IIIとほぼ互角なのに価格が半分にすることができたと考えれば、ある程度は気持ちの折り合いを付けざるを得ない。見た目も安っぽくないし、遅いと言われるAFも特に問題なく使えるし、考えようによっては非常にお買い得な機種といえる。
あとは好みの問題になるが、ここまで使ってみて、結構気に入っている。