映画レビュー
1960年代から70年代にかけて女子テニス界に君臨したビリー・ジーン・キングと元男子世界チャンピオンのボビー・リッグスとの男女対抗試合(Battle of the Sexes)を題材にした映画。
中学生~高校生の頃はテニスとは全く無縁で興味もなかったが、新聞などで目にしたのは「キング夫人が…で優勝」というような見出し。男子のビョルン・ボルグやマッケンローは時代がもう少し後なので、海外のテニスの話というとキング夫人が勝ったということしか聞こえてこない状態だった気がする。
キング夫人というくらいだから、旦那のキング氏が居るはずと思いながら敢えて調べもせず放置していたが、映画にはキング氏が登場。長年のもやもやが解決された。このキング氏、ツアーで転戦する夫人を追いかけては氷で膝を冷やしてやるなど、甲斐甲斐しい。でも最後は離婚されてしまうらしいけど。
主演は「ラ・ラ・ランド」でアカデミー主演女優となったエマ・ストーンとコメディ出身で芸達者なスティーブ・カレル。エマ・ストーンは元々典型的な美人ではないが、この役作りではキング夫人のおばさんぽいところを完全に押さえていた。スティーブ・カレルは、「30年後の同窓会」では堅い演技を見せたが、ここでは地でやっていた風。
主演の2人はテニスの猛特訓を受けて、実際にプレイしていたというが、今のテニスと比べて、かなり球の速さが遅い気がする。面白いのは、試合中のカメラのアングルが当時のテレビ中継のカメラと同じで、チョロチョロ動かないこと。これが却ってレトロなテレビ中継の臨場感を作っていた。
それなりに楽しめる映画ではあるが、みおわってみると、過去数年映画の一つの潮流であったLGBT物と近年の「Me Too」に始まるハリウッドのスキャンダルと女性の権利主張の流れの良いところ取りをしようとして中途半端になってしまったという感じがしないでもない。
全米テニス協会が女子選手を差別していた悪の権化というのは分かりやすいが、ビリー・ジーンと戦ったスティーブ・カレル演じるボビー・リッグスのキャラクターの掘り込みが浅いのが残念。強烈な個性を持ったボビーがギャンブル依存症が元でビリー・ジーンとの試合へと進んでいったことは分かるが、そこへ至る心理状況とかの描写もないし、そもそも彼が男女差別主義者だったのかも不明。う~ん、もうちょっとなんとかなったんちゃうかな。
予告編
2018年に観た映画
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