映画レビュー
好き嫌いがはっきり分かれそうな映画。
フロリダのディズニー・ワールドの近くのモーテルで暮らすシングルマザーのヘイリーと娘のムーニー、2人を取り巻く同じ貧困層の人たちやモーテルの管理人の毎日を描く。
映画が始まって最初の5分でムーニーを中心とする子供たちのタチの悪いいたずら、耳に障る甲高い声、礼儀正しさと対極にある言葉遣いに疲れてくる。だが、映画はシチュエーションを変えて繰り返し悪ガキのいたずらを見せ続ける。
母親のヘイリーはせいぜい20代半ばにしか見えないが、他人と接する態度、言葉遣い、知らない人に小銭を無心するところなどは娘と変わらない。精神状態は子供のまま大人になったという感じ。
映画が進むにつれ、この仲良し母娘が貧困環境から抜け出すことができる可能性がゼロであるだけでなく、悪い方へと進んでいることが見えてくる。しかし、いつかは何か希望のようなものが見えてくるのではないかと期待はするが、時間だけが過ぎていく。
ラストで友達のジャンシーがムーニーの手を引いてディズニー・ワールドへ連れていくが、これをもって邦題の「真夏の魔法」というには無理がある。結局、母娘にとっての希望はないまま映画は終了。
この映画が映画として成立しているのは、管理人役のウィレム・デヴォーの存在が柱となって発散するのをかろうじて食い止めているからに過ぎない。ヘイリーもムーニーも周囲の人たちに迷惑を掛け、犯罪といえるようなこともしているが、「ごめんなさい」というセリフは一度も出てこなかった。最後まで感情移入できなかった2人は名演技をしたといって良いのかもしれない。
ディズニー・ワールドの近所という特殊性からなのか、原色を使った鮮やかな建物など色使いに特徴がある。また、短いカットを切り替えて見せていく撮影も面白いと思ったが、まあそれだけ。
タイトルの「フロリダ・プロジェクト」が今一つしっくりこなかったので調べてみると、プロジェクトには「公共住宅」という意味があった。自宅を取得できない低所得層の人たちが賃貸住宅として住み着いているモーテルが「公共」の住宅ということで納得。
予告編
2018年に観た映画
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