ナイル川を渡り死者の土地西岸、王家の谷へ
ホテルをチェックアウトしてルクソールの東岸から西岸へ端を渡る。古代エジプトでは、日が昇るナイル川東岸は生者の土地、日が沈む西岸は死者の土地。なので墓や葬祭殿は西岸にある。目指すは大桶の谷。
混雑するまえに朝から出かけたが、すでに他の観光客が続々入場。
入り口の展示室の王家の谷の模型を見ながらガイドから全体的な説明を聞く。
この模型はプラスチック製で、下から除くとそれぞれの墓が地下にどう延びているかが分かる。
このカートで谷の奥へ向かう。
カートはここまで、ここからは徒歩。正面の岩山がピラミッドの形をしていることが、この谷が王家の墓地として選ばれた理由だという。
王家の谷の全体図。墓には発見された順にKV(King’s Valley)番号が付けられている。ツアーには一般チケットが含まれていて、入りたい墓を3つ選ぶことができる。 ただし、この一般チケットでは入れず、別にチケットを買わなければならないのが、セティ1世の墓 (KV17)、ツタンカーメンの墓 (KV62)、ラムセス5世・6世の墓 (KV9)。予めツタンカーメンを追加で頼んでおいたので、4つの墓を見ることができる。
ここは休憩所。売店もある。ガイドはライセンスがあれば各地の遺跡に無料で入れるらしいが、王家の谷では墓の中に入って解説することを禁止されているそうで、客は単独で入っていく。その間のガイドのたまり場にもなっている。
まずは人気のツタンカーメンの墓へ
V62、ツタンカーメンの墓。知名度では一番、混むこと間違いないので真っ先に行く。
それぞれの墓には構造と見どころを示す掲示板がある。ツタンカーメンの墓には、短い下りの通路の突き当りに部屋があり、その右側に玄室、それら以外に2つの小部屋があることが分かる。降りてみて分かったが、2つの小部屋には入れない、というか閉じられていて入り口も分からない。
シンプルな下りの通路。後で他の墓に入って分かったが、通常はこの壁面や天井はびっしりとレリーフで飾られていなければならないが、そういう装飾が全くない。ツタンカーメンが若くして亡くなったため、装飾が間に合わなかったためらしい。
最初の部屋の左側にツタンカーメンのミイラが安置されている。王家の谷の墓の殆どは盗掘されているが、ツタンカーメンの墓は盗掘を免れたので黄金のマスクを含む多くの豪華な棺や副葬品が発掘されているが、ほぼ全てのものは博物館へ移されている。ツタンカーメンのミイラだけが無防備な状態でここに残されているのを不憫に感じてしまう。
部屋は狭い。ミイラを見て撮影するのも順番待ち。
最初の部屋の右側にある玄室に残された石棺。これ以外の棺や逗子は博物館へ移されている。
玄室の壁3面の壁画の保存状態は良い。
構造、サイズが標準的なラムセス4世の墓で基礎知識を得る
地上に戻り、一般券を使って最初の一つ、KV2、ラムセス4世の墓へ入る。この墓はまっすぐな構造で、長すぎず、深すぎず、最初に訪れるには良い墓。
入るとすぐ左側の壁に楽セス4世と太陽神ラーが並ぶレリーフがある。
個の墓は早くに発券され多くの人が出入りした割には保存状態他良い。
奥の玄室に到着。レリーフを施した巨大な石棺の周りを廻れる。天井には天空の女神「ヌト」が夕方に太陽を飲み込み(日没)、体の中を通して、朝に再び産み落とす(日の出)という「死と再生」のサイクルが描かれている。
地上に戻る。天気が良く、気温も快適。
ラムセス2世の息子なので期待して入ったメルエンプタハの墓
次は、KV8、メルエンプタハの墓。このファラオは長期政権のラムセス2世の息子で、父が長生きしすぎたせいで、王になったのは還暦を過ぎてからだという。
入り口を入ったところの壁にはファラオと太陽神ラーが並ぶ壁画がある。どうやらこれが定番みたい。
谷で2番目に大きな墓で、全長約165m。長い下りを降りてゆく。
下る途中にある小部屋のレリーフは彩色されているがかなり痛んでいた。過去の浸水で墓の下半分はダメージを受けたらしい。
一番奥の玄室に到着。花崗岩で作られた大きな石棺とその蓋が展示されている。石棺本体は修復した跡があるが、レリーフを施した蓋はきれいに残っている。大きくて重いサイズと、地上までの長い上り坂が盗掘者に持ち去られなかった理由かもしれない。
ガイドお勧め、ラムセス3世の墓
最後の墓は、KV11、ラムセス3世の墓。やたら長い。写真の人は別の組のガイド。写真を撮るために退いて欲しかったのに延々しゃべっていて閉口。
入ってすぐ左の壁はおきまりのツーショット。
有名な盲目のハーブ奏者の壁画。この絵ともう一つがセットになっている。
延々と続く長い通路。壁と天井のレリーフや絵の保存状態は良い。
奥の少し広くなっているところ。ここのレリーフも見ごたえあり。
最後にもうひとつ、セティ1世の墓
標準チケットで3つの墓に入ったが、もう少し観てみたくなってオプションで最も高い(ツタンカーメンの墓の約4倍)KV17 セティ1世の墓のチケットを追加で買う。セティ1世は各地に遺跡を残したラムセス2世の父親。古代エジプトの国力があった時期のファラオの墓なので期待は大きい。
約束の太陽神。脇にはスカラベ。
レリーフと彩色のクオリティが高い。
途中にあった盗掘防止の落とし穴。
ファラオとハヤブサ頭のホルス。
途中の柱が並ぶ少し広くなった部屋。
壁に下書きを描いたところで制作が止まってしまった未完の部屋があった。
掘り下げたレリーフではなく、手間を掛けて人物が浮き上がるように彫られていることが良く分かる。
玄室の壁の壁画。保存状態が素晴らしい。
玄室の天井画は有名な天体図。アーチ状の天井に、カバやワニの姿をした星座の神々が描かれている。 かつてここには半透明のアラバスターで作られた美しい棺があったが、発見者のベルツォーニが持ち出し、今はロンドンの個人美術館にある。
高い追加料金を払っても観る価値があった。地上に戻る。
王家の谷を出て、土産物売り場のセールスの呼びかけを無視して車に戻る。次の目的地は、王家の谷からはピラミッド岩の裏側にあるハトシェプスト女王の葬祭殿。
王家の谷の裏側にあるハトシェプスト女王の葬祭殿
でかい。やたらでかい。ハトシェプスト女王は今後別の遺跡にも関係してくる重要人物なので説明しておくと、
- 先王トトメス2世の妻
- 継子トトメス3世が即位するまでの摂政だった。
- トトメス3世が成人しても譲位せずに王位を名乗りファラオとして君臨。
- 男性しかファラオになれなかったので、絵画や彫刻には男性として描かれている。
- 後継のトトメス3世によって、王としての記録が意図的に抹消された。
大きさは見ての通り。建物は三層のテラス構造になっていて、一番下には特になにもない。
正面に向かって左側にある女神ハトホルの礼拝所。柱の上部がハトホルの彫刻になっている。反対側はアヌブス神の礼拝所になっている。
ハトホルは牛の形で描かれることが多いそうで、ここにも冠を被った牛のレリーフがある。
中層の石像群。
最上段にある太陽神の神殿への入り口。
冬至に太陽の光が一直線に差し込むように設計されているらしい。ドーム状の天井で、思ったよりも小さい。
かなり崩れていたメムノンの巨像
最後に向かったのがメムノンの巨像。元々はアメンホテプ3世の葬祭殿の入り口を守る座像だったが、本殿は構成のファラオが石材を使うために破壊したので残っていない。石像もかなり損傷している。
2体の巨象の後ろにも2つの小さめの座像は神殿の一部だったらしいが、これらも損傷が激しい。
ナイル川クルーズ船にチェックイン
今日の観光は終了。ナイル川をルクソールからアスワンまで航行するクルーズ船にチェックイン。今日から4泊する。
クルーズ船のロビー。船は4階層になっていて、屋上にデッキがある。ここは下から2番目の階。
割り当てられた客室は一番上の階。真ん中の廊下の両側に客室が並び、ホテルのような感じ。
屋上のデッキ。屋上には子供用のプールなどもある。
一番下の階にあるレストラン。
食事はブッフェ、今日の昼ごはん。
夜も同じレストランでブッフェ。料理の種類はまずまず。飽きさせないように入れ替わっている。飲み物は別オーダーでビールやワインもある。エジプト産ワインがボトルで20USドル。
フルーツの種類は限られているが、地元産のデーツ(なつめやし)が常にある。干していないフレッシュな大粒の実で、完熟の手前らしくサクサク感が残っていておいしい。ケーキ類やアラブの甘いデザートは豊富。
船はルクソールに留まり、明日に東岸を観光した後にナイル川を上流へ向けて出港する。