映画レビュー
「きっと、うまくいく(2013)」、「PK(2016)」、「ダンガル きっと、つよくなる(2018)」に続くアーミル・カーンの主演作。演じた役は、誠実な大学生、宇宙人、引退した頑固なレスラーで、今度はかなりアクの強い落ち目のミュージシャン兼プロデューサー。今まではアーミル・カーンが主演を張っていたが、この映画では主演をザイラー・ワシームに譲って脇役に。ちなみにザイラー・ワシームは「ダンガル きっと、つよくなる」でアーミル・カーンに無理やりレスリングをやらされる娘の役を演っていた人。アーミル・カーンはプロデューサーに名を連ねているので、制作側にシフトしているのかもしれない。
過去のアーミル・カーンの映画ではインドの混沌とした宗教を題材とした「PK」を例外として、あまり宗教色が出ていなかったように思うが、この映画では主人公インシア(ザイラー・ワシーム)の家庭はイスラム教。最初は分からなかったが、ブルカを被るシーンが出てきたので分かった。インドではヒンズー教徒の国のイメージがあるが、実は国民の10%以上はイスラム教徒でキリスト教徒よりも多い。アーミル・カーン自身もイスラム教徒の家に生まれている。ここに来てイスラム教を前に出した映画にしたことに何か意図があるのだろうか?
映画の中でインシアの母親が首飾りを売って買ってくれたノートパソコンは、ロゴは隠されていたが、HPのStream 7という機種。同じモデルを持っているので分かった、まあどおでもええけど。
最近観たインド映画「あなたの名前を呼べたなら」でも、インドでの男女差別がテーマの一つとなっていたが、この映画でもインシアのDV親父の暴虐ぶりが描かれる。この父親、見た目はシュッとしているのでインシアやその母親に辛く当たるところの冷酷さが際立ってなかなか良い俳優と思う。
大抵のインド映画は主人公が大ピンチを迎えるが、最後にドンデン返しがあってハッピーエンドというパターンが多い。この映画もその例に漏れないが、かなり追い詰められて、「えぇ、ここからひっくり返すのん?」というところから母親が頑張る。このインパクトのあるラストがインドでの歴代3位の興行成績につながっているのかもしれない。
外さないというところでは、さすがにアーミル・カーン。興行的にも成功していて、確かに面白いが、「きっと、うまくいく」で感じた新鮮な驚きみたいなものから遠ざかっているような、一抹の寂しさを感じてしまうのはどうしてだろうか?
予告編
2019年に観た映画
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