映画やドラマの中でしか観たことがなかった京劇を初めて生で観る。 演目は覇王別姫。 この公演が梅蘭芳生誕120周年記念とあるように、名優梅蘭芳の代表作。話は、項羽と劉邦の闘いの最終局面で、これまで連戦連勝だった項羽が初めて劉邦に敗れて愛妾の虞姫ともども命を落とすというもの。司馬遼太郎が小説を書いているし、項羽の歌は漢文の教科書にも出ていたくらいポピュラーな話。
劇場は西池袋にある東京芸術劇場のプレイハウス。池袋へ行くのは久しぶり。初めて行く東京芸術劇場は入ってみると吹き抜けの天井がガラス張りでえらい立派な建物。
この建物に、1999人収容できる大ホール、841席の中ホール、そして300席の小ホールが2つ収まっている。地下から入るとまず2つの小ホールの入り口がある。
中ホールはプレイハウスの愛称が付いていて、ここが今日の会場。
プレイハウスは客席数こそ大ホールの半分に満たないけど、綺麗な良いホール。
ホールの側面は音響効果も考えた煉瓦造り。
予約できたのは中央の前から4列目という良い席。残念ながら撮影はここまで。
台詞は中国語なので翻訳の字幕が、オペラなんかと同様に、舞台の両側に表示される。字幕を読むために視線を動かすことになるけど、標準的な映画より台詞ははるかに少ないのでそんなには苦にならない。
京劇は初めてやけど、歌舞伎と似ているところもある。 例えば、
- 男優の一部は隈取のように顔を塗っている(「臉譜」というらしい)
- 見得を切るような動きがある
- 立ち回りに型があるみたい
- 楽隊が舞台脇で演奏するところ
- 手に持った鞭で馬を表現するようなところ
- 独特の抑揚のある台詞回し
とはいえ、似ていないところもいろいろあって、例えば、
- 歌唱が重要なパートになっている
- とんぼ返りのような激しい動きが入って、戦場での闘いなんかを表している風
- 演奏は鉦の音がかなりうるさい
- 舞台装置が少ないというか殆ど無い
というようなところに違いを感じた。 見得の切り方も微妙に違っていて拍手して良いかどうか迷ってしまうこともあった。
項羽が、
力拔山兮氣蓋世 (力は山を抜き、気は世を覆う)
時不利兮騅不逝 (時利あらずして騅逝かず)
騅不逝兮可奈何 (騅逝かざるを如何せん)
虞兮虞兮奈若何 (虞や虞や汝を如何せん)
と歌うところは劇中のハイライトと思うけど、ここで「溜め」が短く、さらっと次へと移ってしまったので「あれっ」ということも。
そういうことも含めて、初京劇は楽しめた。有名な演目で筋を追うのに労力を割かずに観れたのも良かった。機会があれば、また観に行ってみたい。