映画レビュー
なんか最近は実話に基づく映画しか撮ってないクリント・イーストウッド監督の最新作。前作「ハドソン川の奇跡」はトム・ハンクスの演技が良かったけど、この映画ではテロの犯人以外は主演の3人を含めて事件の当事者たちを呼び寄せて出演させたという一風変わった映画。たしかに取材して、脚本を起こして、俳優に演技指導をする手間が省けて簡単ということはあるにしても、大胆な試みであることに違いない。
実際に観てみると、トム・ハンクスが窮地に立たされて苦悩するような演技の深みはないが、ドキュメンタリー風でこれはこれで悪くはない。そもそも、パリ行きの列車で起こったテロ未遂事件の格闘シーンは時間にすれば数分間。映画では犯人の背景には一切触れずに、事件現場へ行くまでの顔を見せないカットをところどころに挿入しているだけなので、列車内のシーンを除けば、3人の子供時代の話や、成人してから3人で休暇を取ってヨーロッパを遊びまわることなどが大半を占める。クライマックスを膨らますにも、事実に基づいているだけに勝手には増やせない。
この映画が94分という短さなのは2時間枠を埋めるだけのネタが無かったからと思われるが、イーストウッドの上手いところはその短さを感じさせないところ。例えば、犯人を取り押さえた後に、犯人とけが人を列車から運び出して連れていくところなどは、特に必要はなさそうなシーンであるが、これがあることで格闘シーンの緊張から解放するのに丁度良く、かつ長すぎてダレてしまわない程度に抑えていると感じた。
演技コテコテの映画ではなく、さらっとした映画もたまには良いけど、毎回これだと飽きるかな。イーストウッドの次作は「スター誕生」のリメイクらしいので、どんな映画になるのか今から楽しみ。
予告編
2018年に観た映画
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