今日の映画 – ボーダーライン（Sicario）

アメリカとメキシコの国境地域でのメキシコの麻薬カルテル、それと闘う組織の人たちの話。

この組織がかなりいかがわしく、麻薬カルテルと闘うためなら法律を無視して国境も超えるし、容疑者を拷問する。このチームのリーダーがジョシュ・ブローリン演じるCIAの男。このおっさん、会議の時にはビーチサンダル履いてるのに、戦闘場面にも率先して加わっていく。

直前の作戦で部下を死なせたことから、このチームへ志願して編入されたのがエミリー・ブラント演じるFBIの麻薬関係の女捜査官。

そして、もう一人はこのチームの顧問ということになっているが、元コロンビアの麻薬カルテルに属していて、妻と娘を殺したメキシコの麻薬カルテルへの復讐だけのために生きているようなのをベニチオ・デル・トロが演っている。

主要登場人物はこの3人で、日本ではエミリー・ブラントを主演に位置づけたい意図があるのか、ポスターでも中央に大きめの写真を置いている。たしかに、法を無視して暴走する2人のおっさんを目の前にして、自身の善悪の基準を守りたいエミリー・ブラントの視点で観てしまうのでそんなに違和感はないが、原題の「Sicario」はスペイン語でヒットマンとか暗殺者の意味。これは狭義ではデル・トロの役そのものだし、広義に解釈すればジョシュ・ブローリン率いる違法戦闘集団とも考えられる。

なので、この映画は自分や組織の目的を達成するために非合法な手段も厭わないおっさんたちのドラマ。それを日本では焦点をエミリー・ブラントにもってきて、タイトルもメキシコ国境と善悪の境目を示唆する「ボーダーライン」としている。女性主人公ということにすることで、昨年の「ゼロ・ダーク・サーティ」を連想させようという意図もあったのではないか？ これらの操作は作為的ではあるが、良し悪しはともかく、この映画では成功していると思う。

映画の中では、麻薬カルテルのメンバーを監視するためなどに頻繁に衛星から撮影したリアルタイムの動画が使われていて、車１台でもクリアに写っている。実際にこういう技術が開発済だとすればけっこうすごいと思う。衛星の利用だけでなく、プライベートジェットを使える予算を持って法律を無視するCIAがFBIとの比較で悪者らしく描かれるのはいつも通り。

この映画は大作でもないし、ストーリーに広がりがある訳でもないが、テンポよく進んでいく切れ味の良さと撮影のうまさで独特の雰囲気を出しているところがよい。

Trailer

2016年に観た映画