今日の映画 – ヘイル・シーザー（Hail, Caesar!）

コーエン兄弟のコメディ最新作。舞台は1950年代のハリウッド。

主演は映画会社の何でも屋を演じるジョシュ・ブローリン。社会常識に欠ける人が多い映画界の人が起こすスキャンダルのもみ消しなど汚れ仕事も厭わない問題解決役。というと下っ端の便利屋みたいなのを連想するかもしれないが、実際は貫禄ある大人。ジョシュ・ブローリンは芸歴は長い割にあまりパッとしないという印象やったけど、この映画と同じコーエン兄弟の「ノーカントリー（2007年）」に出演した以降はがぜん存在感が出て作品にも恵まれるようになったという感じ。

もう一人の主演クラスはコーエン兄弟のいじられキャラになってしまったジョージ・クルーニー。この映画でも二枚目大スターでありながら実は大根っぽい間抜けた三枚目役を喜んでやっているように見える。

主な役柄はモデルになった実在の人がいるようで、水着姿で撮影しているスカーレット・ヨハンソンはエスター・ウイリアムス。西部劇でアクロバット的な乗馬の腕前を持ちながら、台詞をちゃんとしゃべれない若手スターはなんとなくジュリアーノ・ジェンマを連想させる。そして、チャニング・テイタムはジーン・ケリー張りの踊りを披露する。

それ以外にも、芸能記者姉妹も実在のモデルが居るらしいが、そこまでハリウッド事情に詳しくないので、その面白味が分からないのが残念。

映画の主な筋書きは、ローマ兵士役のジョージ・クルーニーが、ハリウッドの赤狩りに抵抗する脚本家達に身代金誘拐されるという荒唐無稽なもの。この犯人グループはハリウッドを追放されたいわゆる「ハリウッド・テン」の10人がモデルで、その中で落ち着いたリーダ格の人がドルトン・トランボか。この共産主義グループは映画では完全に茶化されていて、コーエン兄弟がこの時代の共産主義の排斥とそれに対する抵抗をどう見ているのかはイマイチはっきりしない。ドルトン・トランボを題材にした映画は近々公開されるので、観てみたい。

最後に、タイトルに「シーザー」とあるが、シーザーが生まれたのは紀元前100年くらい。ジョージ・クルーニーローマ兵としてが出演する映画はキリストらしい人が出てくるのでシーザーから100年くらい後のティベリウス帝の時代話。ということは、この「シーザー」は人名ではなく、皇帝の称号として使われるようになったシーザー（カエサル）ということか。

Trailer

2016年に観た映画