映画レビュー
ワシントン・ポストを舞台にした映画というくらいの予備知識はあったので新聞社をイメージしていたが、FOXのいつものオープニング画面からヘリコプターのロータの音がして、いきなりベトナム戦争から始まったのでいささか面食らった。映画が進むにつれ、ペンタゴン・ペーパーがベトナム戦争に関係した機密文書であることが分かるので、冒頭のシーンも納得できるのだが。
実話に基づいた映画だが、スティーヴン・スピルバーグがメガホンを取ってこの映画を監督したのは、ドナルド・トランプへの当てつけと誰もが思うに違いない。お金も充分あるし、好きな映画を好きな時に作れる余裕か?
2時間枠にドラマを詰め込むところにスピルバーグらしい切れの良さは感じるが、登場人物がけっこう多いので顔と名前と役柄を覚えるのが大変。主演がメリル・ストリープとトム・ハンクスという何を演ってもハズさない2人なので作る前からある程度の成功は約束されていたような映画。しかし、安定しているがゆえに意外性に欠けることも否定できない。ドラマとして充分楽しめるが。
出演者では、テレビ・ドラマ「ブレイキング・バッド」のスピンオフ「ベター・コール・ソウル」でソウルを演じたボブ・オデンカークに注目。4番目にクレジットされ、出番と台詞も多く、なかなか良かった。
新聞社の中のシーンが多いが、人の動きに合わせてカメラが動くなど、単調にならないような絵作りになっている。後半の新聞印刷のための活字が作られて組まれていくところとか、印刷工場で刷り上がった新聞がコンベアーで流れるように動いていくシーンは造形美を感じさせる。
映画のラストシーンはウォーターゲートビルのシーンで終わり、「大統領の陰謀」へと続くという終わり方。さらにエンドロールの終わりに「ノーラ・エフロンに捧ぐ」とある。ノーラ・エフロンを調べてみると、2012年に亡くなった脚本家・監督。なぜ、6年も前に亡くなった人を引き合いに出すのかと思ったら、エフロンの前夫はウォータゲート事件のワシントン・ポストの記者カール・バーンスタイン(「大統領の陰謀」でダスティン・ホフマンが演じた記者)だったという繋がりがあった。
予告編
2018年に観た映画
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