映画レビュー
原題の「Suffragette」は「婦人参政権活動家」という意味。約100年前のイギリスでの実話に基づいた映画。
まず、邦題の「未来を花束にして」が気に入らん。映画は洗濯工場の過酷な職場で重労働を強いられながら、女性に参政権がない現状に特に問題意識を持っていない主人公が、だんだんと男女の平等に目覚めて活動家となっていく話なので適当な日本語がなければ「サフラゲット」で良かったと思う。ポスターも、オリジナルのちょっと色あせた写真ではなく、綺麗な写真に変えられていて、しかもキャリー・マリガンを左に寄せてまでメリル・ストリープを大きく載せて、極めつけは左下に意味のない花束を入れている。映画は硬派というほど硬くもないのに、興行的にソフトに見せたいという映画会社の意図が見え隠れして気持ち悪い。市川房枝が生きてたら怒るで、ほんま。
タイトルをけなしたけど、映画は必要以上に説明的になることもなく、テンポよくまとまっている。サラ・がブロン監督の初作品みたいやけど、なかなかしっかりした映画。街中のシーンは限られているが、100年前の服装や2階建ての乗合自動車などセットにも手を掛けている。ただ、活動家の女性たちが爆弾テロまでやっても、世論も政治家もついてこなかったのに、一人の殉教者でコロッと事態が好転してしまうというのは歴史の事実であれば仕方ないものの、いささかあっけない。
主演のキャリー・マリガンは、平凡な工員から家庭を失ってでも活動に身を投じる用になる過程で表情が次第に変わっていくところなどええ感じ。初めて見る女優かと思ったら、ここ数年で観た映画では「マイ・ブラザー」、「ウォール・ストリート」、「華麗なるギャツビー」、「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」にも出ていたことが判明。う~ん、顔が覚えられん。まだ31歳なのでこれからの活躍を期待。
爆弾をせっせと作る過激な活動家役のヘレナ・ボナム=カーターは御年50歳とは思えぬ若々しさと広いデコで相変わらずええ味出してます。これも日本のポスターのツンとした感じよりもオリジナルポスターのちょっとくたびれた感じがしっくりくる。監督ティム・バートンが相方で、彼の映画によく出ていたのに、数年前に別れてました。別れたなかったら、つい最近観た「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」でもミス・ペレグリンを演ってたかも、ちょっとイメージ違うけど。
大御所のメリル・ストリープはゲスト出演に近い感じ。ドナルド・トランプを激昂させて「過大評価された女優だ」と言わせるくらいの人なので、本人はこういう役に出たかったのかも。
映画の筋からして、女性が主役の映画で男は脇役に回らざるを得ないが、強硬な捜査をする警部役のブレンダン・グリーソンが拘置所での収監者への不当な扱いに憤るところなんかもよい。気の弱そうな旦那役のベン・ウィショーは、周りに女房も管理できない男と見られたくなくて強がっているだけで、ほんまはええ人ちゃうかな。100年前は女性には辛い時代やったけど、男連中にもええ時代ではなかったのかなとふと思った。
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2017年に観た映画
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