今日の映画 – われらが背きし者（Our Kind of Traitor）

ユアン・マクレガー主演のサスペンス物。

原作者のジョン・ル・カレは「裏切りのサーカス」、「ナイロビの蜂」、「誰よりも狙われた男」などのスパイ物の映画の原作者で、小説を書き始める前はMI6で働いていたという。

この映画にもMI6が出て来るが、主人公の大学教授ペリー（ユアン・マクレガー）と妻のゲイル（ナオミ・ハリス）はやっかいごとに巻き込まれていく一般人。

ロシアンマフィアの金庫番でマネーロンダリングなどで組織に貢献してきたのに、新ボスにお役御免で消されそうになって、イギリス政府の汚職高官リストと引き換えに家族ごと亡命を希望しているのがディマ（ステラン・スカルスガルド）。

MI6の中間管理職で、上司の許可がないままディマの情報に乗って暴走気味に突っ走るのがヘクター（ダミアン・ルイス）。ここらが主要な登場人物。

メインのストーリーが、組織を裏切り、政府と取引して亡命しようとしている話なので緊迫感が継続する。併せて、ロシアンマフィアのパーティとか、組織のチンピラのアパートに連れて行かれるところなどは怪しげで、観ていても緊張感は高まる。そういうところはサスペンス映画として、よくできていると思う。

なので、映画は飽きずに一気に観てしまうが、あとで振り返ってみると突っ込みたくなるところがいろいろある。 例えば、

• MI6の中で作戦が承認されておらず、担当者はヘクターを含めて3人しかいないことが明らかになり作戦の継続は無理と思われたときに、素人のペリーが「あと何人いればできるんだ？」と急にリーダーシップを発揮して、それにMI6の3人も乗ってしまうのはありえへんやろ。
• ペリーがディマに同情して危険を顧みずに助けようとするのは良しとしても、妻のゲイルが簡単に仲間に入るのはどうかな。
• 隠れ家を突き止めたロシアンマフィア一味が送り込んできた殺し屋がたった3人？ しかもそのうち2人はあっさりやられてしまう。ロシアンマフィアしょぼすぎ。
• しかも、逃走した3人目の殺し屋とそれを追いかけたディマが、火器を使わずにどづきあいしていて、後から駆けつけた素人のペリーが拳銃で決着付けるのも変。
• ヘリコプターは偶然の事故とすれば都合良すぎるし、ロシアンマフィアの仕業とすれば無理がある。

という具合。

出演者では、ディマ役のステラン・スカルスガルドがコテコテのマフィアのおっさんの風采なのに金庫番だけあって抜群の記憶力を披露したりするなど存在感抜群。

主演のユアン・マクレガーは食われてしまった感が無きにしもあらず。しかし、ジェダイのようなスーパーマンではなく、大学教授なのにどちらかというとうだつの上がらないタイプを演じて演技の幅は広がったように思う。

この映画は大作ではないし、出演者やスタッフが有名な映画祭で受賞するような映画でもない。しかし、細かなところを気にしなければ、気軽に楽しめる丁度良いくらいのサイズ感と充実度があると思う。

Trailer

2016年に観た映画