映画レビュー
ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンの最後の映画。ヒュー・ジャックマンは17年前の無名の時にこの役を得たことがその後のスターへの道の入り口だったので思い入れもあるのだろうけど、「レ・ミゼラブル」の成功でシリアス・ドラマで十分やっていけるところを見せたところでウルヴァリンからの卒業は時間の問題かと思ってた。
初期のX-MENの映画は予算もそんなに掛けていなかったのかかなり安っぽい造りで、それが独特の雰囲気を作っていた。そこからスピンオフする形でのウルヴァリン物、「ウルヴァリン: X-MEN ZERO」、「ウルヴァリン: SAMURAI」は脚本も、映像も金を掛けてかっちり作っていた。そして最後になる本作は、タイトルから「ウルヴァリン」の名が消え本名の「ローガン」になっている。
映画の冒頭、出てきたローガンはくたびれた中年のおっさんになってレンタルリムジンの運転手をやっている。チンピラに囲まれて目の前で車のタイヤを盗まれそうになっても追い払うことすらできない始末。喧嘩のために爪を出そうとしてもすんなりと出てこない零落ぶり。足を引きずって、時々咳き込むのが痛々しい。ヒュー・ジャックマンも今年49歳なので見た目は地でいけてる感じ。
さらに驚くのは、36年間新しいミュータントは生まれず、ローガン以外のX-MENの生き残りはパトリック・スチュワート演じるプロフェッサーXとキャリバンの2人だけで、プロフェッサーXはアルツハイマーのため自分の能力のコントロールも出来ない状態。かつてX-MENは秘密基地からジェット機まで持っていたのに、今ではメキシコ国境近くの隠れ家から引っ越すための金もないという変わりよう。
前作を観ていなくても、またウルヴァリンやX-MENについての知識がなくても楽しめる娯楽映画になっているが、予備知識があるに越したことはない。たとえば、ローガンが持ち歩いている「アダマンチウム」という金属の弾丸は、ウルヴァリンの骨格や爪と同じ素材で、自然治癒力が高く不死身に近いウルヴァリンを殺すことができる弾丸。すなわち、ローガンは自殺することも考えて弾丸を持っている訳だがそういったところまでの詳しい説明は映画中にない。この弾丸が最後に役に立つ訳だが、ちょうど口径の合うリボルバーが転がっている都合の良さを追及してはいけない。
ローガンがくたびれている分、ミニ・ウルヴァリンみたいな少女ローラの戦闘シーンでの動きの良さが目立つ。演じているのは12歳の子役ダフネ・キーン、映画初出演。
組織から逃げ出したローラを追う悪役ドナルド・ピアスを演っているボイド・ホルブルックがいい感じ。彼はテレビドラマ「ナルコス」の捜査官役で名を上げたが、映画でも人気が出るかもしれない。
映画の中では西部劇「シェーン」の最後のシーンがテレビに映るところがあり、ラストでのローラのセリフも「シェーン」のセリフそのまま。善良な農家の一家がならず者に水を止められて困っているところへ、ローガン、プロフェッサーX、ローラ3人での逃避行の途中で立ち寄るところは「シェーン」を連想させるが結末はかなり違う。正直、この一家が巻き込まれるのは理不尽で気の毒。
ヒュー・ジャックマンのウルヴァリンはこれで終わったが、逃げ延びた子供たちがNew X-MENとなってシリーズが続いていくのかどうかは不明。ローラが墓標の十字架を抜いて、X字型に置き直したように、これがX-MENの終わりなのかもしれない。マーベル映画なのにエンドロールの後の「お楽しみ」がなかったし。
予告編
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